概要
地域企業の海外展開の一層の促進や裾野を拡大するためには、企業相互の連携を促進し、海外展開の成功事例などを身近でタイムリーに入手できる場・環境を整えることが重要です。
このため、四国経済産業局では、企業の業種や規模、海外展開の内容や段階を越えて、様々な企業や支援機関が一堂に会する「四国地域海外展開応援フォーラム」の活動を展開しています。
その一環として、高知県高知市において「~タイビジネスへの挑戦~」をテーマに、事例紹介を含むパネルディスカッション形式で海外展開事例紹介セミナーを開催しました。
日時・場所
セミナー
平成30年1月12日(金曜日)13時30分から17時25分まで高知会館 3階 飛鳥の間(高知市本町5-6-42)
主催等
- 主催
- 在京タイ王国大使館、四国経済産業局、高知県、JETRO四国4県貿易情報センター、中小企業基盤整備機構四国本部、JICA四国支部、高知県産業振興センター、高知県工業会
参加者
56名開催内容
挨拶

13時30分から13時35分まで
主催者を代表して、四国経済産業局 岡本国際課長からの趣旨説明や挨拶のあと、講師の方々からタイ王国の情報紹介や海外展開について事例の紹介がありました。その後、JETRO高知貿易情報センター 所長 山口 和紀氏のコーディネートにより講師を交えてパネルディスカッションを行いました。
現地情報紹介
13時35分から14時25分(50分)
- 在京タイ王国大使館工業部 公使参事官 バウォン・サッタヤウティポン 氏
-
タイは、中小企業が全事業所の99.7パーセントを占めるなど、日本と類似した点がある。近年は少子高齢化が進んでおり、日本で起きていることが10年後にはタイでも起きると予想されている。
現在タイ政府は、農業、軽工業、重工業に次いで、「Creativity」と「Innovation」をキーワードとする先端産業を第4の産業の柱とする「Thailand4.0」という長期ビジョンに基づき、産業育成に取り組んでいる。育成の対象は10産業に及ぶが、中でも特に重視しているのがロボット産業であり、日本が得意としている分野での協力を期待している。
2016年に日本からタイへの投資は世界全体の36.2パーセント、進出企業は約5,000社と一番のビジネスパートナーであり、また日本の地方自治体と協力協定(MOU)を締結しており、日タイの中小企業を相互支援している。
- バウォン・サッタヤウティポン 氏
- 1999年にタイ王国工業省に入省。
2012年より現職。
- タイ投資委員会(BOI)大阪事務所 所長 パッチャラダー・ナワカウォンカーン 氏
-
タイ投資委員会は投資促進を担当する政府機関であり、税制・非税制恩典を付与して外国からの投資を促進している。
最新の投資奨励政策として、Thailand 4.0経済モデルに基づき10つの産業をターゲット産業に指定して、通常より高い恩典を付与し、高度技術、高付加価値産業への投資を促進することによってタイの競争力を高めることを目指している。
また、現在タイ政府が注力してグローバルハブとして開発中の東部経済回廊(EEC)地区への投資に対しても今年より新たな投資奨励措置が導入された。
恩典付与のほか、タイ投資委員会は、投資家の皆様に対して多種多様なビジネス支援サービスを提供しており、ワンスタートワンストップ投資センターで各種手続き、ビザ・ワークパーミットの発給の便宜を図っている。
今後、タイへの進出を検討される際にはBOIにもご相談いただきたい。
- パッチャラダー・ナワカウォンカーン氏
- タイ投資委員会(BOI)本部産業連携促進部(BUILD)投資促進オフィサー等を経て2017年より現職。
休憩
14時25分から14時40分まで
事例紹介
14時40分から16時10分まで(各30分)
- ホーコス株式会社 代表取締役社長 菅田 雅夫 氏
-
タイ進出のきっかけは、当社のクライアントである日系企業の要請によるもので、他社にない独自の技術が海外展開を後押した。
2011年に現地法人(独資)を設立。最初は工業団地内のレンタル工場で工作機械の部分品の設計・製造をしていたが、2014年に自前の工場を建設し、マシニングセンタの製造を開始した。高度人材の採用と洪水対策等で自由に土地造成ができることなどの理由からバンコクに近い民有地を購入。タイは固定資産税がゼロに近いため、将来の第二、第三工場を建設できる1万坪の土地を確保。将来的には建築設備機器などの製造拠点としても活用していきたい。
タイは現在軍事政権であるが、民主的であり、また、仏教国であるため寛容性がある。また、AECの中心であり、今後、タイを起点としてアジアの他国への進出が期待できる。
-
- 菅田 雅夫 氏
- 1986年トヨタ自動車(株)入社。1988年報國機械(株)(現ホーコス(株))入社後CI推進室室長、業務統括部長などを経て、2005年代表取締役社長に就任し、今日に至る。
- 井上石灰工業株式会社 取締役 海外企画本部長 佐々木 明 氏
-
当社の主力商品である無機銅殺菌剤「ICボルドー」の国内市場が飽和状態となり、海外展開を進めることにした。タイではブドウ栽培を研究する王室プロジェクトにコンサルタントとして参加し、ICボルドーを使ったブドウ栽培に取り組んでいる。
王室プロジェクトに参加できたのは、ICボルドーが日本国内で高いシェアを持ち、新JAS法有機農産物にも使用できる農林水産省登録製品であることに加え、行政、支援機関、タイの関係者などの協力が得られたことによる。
タイは治安が良く、タイ人は温厚で親しみやすい。タイには既に多くの日系企業が進出しているが、タイに進出する企業には、「日本の代表」という意識を持っていただくとともに、自社で目的感・使命感をもった優秀な社員を駐在員として派遣していただきたい。「日本ではこうだった」という固定概念をなくし、謙虚な姿勢でビジネスに取り組むことが重要である。
-
- 佐々木 明 氏
- 化学工業製品専門商社の海外事業部長などを経て2010年に井上石灰工業(株)営業統括取締役として入社し今日に至る。タイ王国には14年間の駐在経験がある。
- 独立行政法人工業所有権情報・研修館 海外知的財産プロデューサー 前山 和夫 氏
-
海外知的財産プロデューサーの前山氏から海外展開における知財リスク等について説明がありました。
展示会出展からスタートし、商談・交渉、契約、輸出と進んでいくプロセスの中にも、様々な知財リスクがある。
例えば、両者合意の上で日本語にて作成された契約書を、現地企業が自社に有利な内容の現地語の契約書に作り替え、公的手続きを済ませてしまったといったケースがある。
海外展開における模倣品の現状や対策、商標出願の重要性等やタイでの知的財産事情について情報提供があり、海外展開を目指す企業にとって、大変参考になる内容であった。
-
- 前山 和夫 氏
- 国内電気製品製造業で30年間勤務。
米国に約3年間駐在し、米国企業とのライセンス交渉、訴訟対応を担当。
名刺交換・交流
16時10分から16時40分まで
パネルディスカッション
16時40分から17時25分まで(45分)
コーディネーターのJETRO高知貿易情報センター 所長 山口 和紀氏の司会進行により、「タイでの外国人就労者」、「タイ政府の許認可、登録」、「情報管理」、「商標権」等について、各登壇者から発言がありました。
- 山口 和紀 氏
- 大学卒業後、1989年ジェトロ入会。長野事務所諏訪支所、オーストラリア・シドニー事務所、国際機関太平洋諸島センター(出向)、三重事務所長、海外調査部経済情報発信課長、農水産調査課長等を経て、2014年から現職。


担当課
地域経済部 新事業推進課最終更新日:令和4年4月7日