1923年(大正12年)創業、1951年(昭和26年)に現在の株式会社伏見製薬所に改組した医薬品・工業薬品メーカー。X線造影剤の「硫酸バリウム製剤」や清涼飲料水の保存剤、化粧品の防腐剤等に使用される「安息香酸類」の国内トップメーカーである。薬品製造で培った技術を活かし、ニッチな分野のナンバーワンを目指して、新しいモノづくりにチャレンジしている。
1953年(昭和28年)に当時製造していた塩化バリウムと硫酸ナトリウムを用いてX線造影剤の硫酸バリウム製剤を開発。バリウム造影剤による高精度なX線検査技法の確立や集団検診の普及もあり、主力商品となった。硫酸バリウム製剤を高濃度化し服用量を減らすなど、より受診者の負担を軽減すべく改良が行われている。また、2016年(平成28年)には国内初となる大腸CT用経口造影剤を開発、内視鏡検査と比べ、事前の食事制限や腸管洗浄剤の服用量が少ないなど受診者の負担を軽減することにより大腸がん検診率の向上を目指している。
「50年前までは不治の病といわれていた胃がんは、最近では早期発見により7割程度は治るといわれている。硫酸バリウム製剤をとおして医療の発展に貢献しているといわれるよう日々努力している。」と吉田氏は語っている。
また、1955年(昭和30年)には大手化学工場で発生する副産物を蒸留・精製して安息香酸類の製造を開始。清涼飲料の保存料、シャンプー、台所用洗剤、歯磨き粉の防腐剤や、車のラジエーターの冷却水、不凍液の防錆剤として利用されている。低価格な海外製の競合品もあるが、同社の高い品質が評価されている。
化粧用パフ原反(ウレタン)の下請生産を経て、工業薬品、医薬品の製造で培った合成技術・反応技術をもとに、2003年(平成15年)に機能性スポンジ(連続微細気孔スポンジ)、2007年(平成19年)には基板等樹脂類の難燃材(高機能ホスファゼン誘導体)を自社開発。同社の機能性スポンジは、韓国の化粧品メーカーに採用されるなど販売を拡大、インフルエンザの診断において、検体採取時の痛みを軽減するために綿棒の代用品として利用されている。
増粘性多糖製品の研究、香川県の希少糖プロジェクトへの参加を通じて、糖鎖、糖の誘導体の研究を開始。注目したのはカエデ科の植物に含まれる希少成分カエデタンニンであったが、肌の角質層内にあるセラミドの分解抑制や生産力アップに効果があるものの、成分の抽出が難しく、非常に高価となり利用されていなかった。
平成28年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)で同社の強みである合成技術を生かした同成分の大量合成技術の研究開発が採択され、安全性やアンチエイジング効果も実証され、機能性化粧品原料「MapleCure(メイプルキュア)」として商品化した。「製薬メーカーとしてしっかりと効果のある化粧品を作りたかった。」と開発者の石川氏。2019年(令和元年)に大手化粧品メーカーに採用されたほか、他の化粧品メーカーやドクターズコスメ開発者からの引き合いも多い。
社内では化学や医学に精通した社員が多く、有機・無機・化合物の適切な扱い方について自然に学ぶことができる環境があり、これまでの技術を熟成・活用し、次の製品につなげる社内ステップが物作りの支えになっている。令和2年度も新たな研究開発がサポイン事業に採択されており、事業化に向けて意欲を持って取り組んでいる。
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※掲載の内容は、令和2年11月19日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
サポイン(戦略的基盤技術高度化支援事業)は「Supporting Industry」の略で、中小企業・小規模事業者が大学や公設試験研究機関、他の企業などと共同で我が国産業を支えるものづくり基盤技術の高度化に向けた研究開発や試作品開発、販路開拓などの取組を支援するもの。最大3年間、合計で9,750万円の補助金を受けることができる。
日本のものづくりの「競争力強化」と「新たな事業の創出」を目指しており、これまで2,000件を超える中小企業・小規模事業者による研究開発プロジェクトを支援している。
同社は平成25年、平成28年度、令和2年度に採択された。