社名の「ケミフェルト」とは、ケミカルとフェルトからの造語で、天然ゴムにフェルトを練り込んだ同社独自のラバーフェルト素材。天然素材をベースにした人や環境に優しいクッション素材は、自動車、家電、介護、アパレル等の多分野で採用されているほか、オリジナルブランド「SOKO」や「CORCHO CORCHO」を展開している。
1959年(昭和34年)国内大手シューズメーカーのインソールを製造する関連会社として創業。自社開発した新素材ケミフェルトの独自のクッション性、通気性、グリップ力と軽量かつ環境に優しい特性から、靴メーカーのインソール、作業用長靴やテーマパーク等のキャスト用ブーツのインソールとして採用されている。また、自動車用内装材やテレビスタンドのクッション材等の需要を開拓。テレビスタンドについては地上デジタル放送への移行による買換需要もあり売り上げを伸ばし、2005年には自社株を買い戻して独立資本とした。しかし、下請けでの経営の限界も感じており、茶殻入り機能性インソールや坂本龍馬をモチーフにしたデザインインソールなど、オリジナル商品の開発を始めた。
テレビ買換需要が終わり、東日本大震災による影響等で業績は悪化してきており、リスクはあるが自社ブランドを展開することを決意。自社の強みである素材の自社開発技術を軸とした差別化素材の開発、他分野への提案を柱に商品開発に挑戦した。
2011年、インソールに芝生、花、生卵等、これまでにないデザインが目を引くグラフィックインソールブランド「SOKO」をプロダクトデザイナーとともに開発。JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)の海外見本市出展支援事業を活用し、2012年、パリで開催された世界最高峰のインテリアとデザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。日本の靴を脱ぐ文化からの新しい提案として好評を得た。また、2013年にJETROの輸出有望案件発掘支援事業採択を受け、コルクとケミフェルトを素材としたステーショナリーブランド「CORCHO CORCHO」を開発。ワインにあう文具という新しい世界観を提案している。そのほか、香川発-先進的ビジネスモデル2013優秀賞受賞、OMOTENASHI SELECTION 2016の受賞等、メーカーとしての認知度を向上させてきた。
一方、新たな機能性素材として「オリーブコルク」を開発し、インソールとして来春商品化する。コルクに香川県産オリーブの剪定作業で発生するオリーブリーフを配合し、オリーブの持つ消臭・抗菌効果を活用した商品となっている。環境にも配慮し、食べるだけでなく原料とすることで地域の新たなプロダクトとしての可能性も広がる。
また、同社はコルク素材加工業者に納品したコルクシートの素材抜き後の残材を有償で買い取り、再シート化する国内リサイクルシステムを構築。素材メーカーとしての社会的責任、安心と環境への配慮も含めオンリーワンを目指している。
吉田社長が目指すのはコルクの国産化。コルクはポルトガルを中心とした地中海沿岸が産地であるが、原木のコルク樫の木の幹を伐採するのではなく樹皮から採取するため、約200年の間何度も利用できる他、より多くの二酸化炭素を吸収するので地球温暖化の防止にも役立つ環境に優しい素材で、SDGsにも繋がる素材である。過疎化が進む地元で栽培できれば、地域の産業にもなる。
「地中海性気候のポルトガルと香川・岡山は似た気候帯にあるので、オリーブが栽培できたのと同じようにチャンスはあるのではないか」新たな挑戦は始まっている。
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※掲載の内容は、令和2年12月18日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
ジェトロは貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指している。海外販路開拓については、主に「新輸出大国コンソーシアム」事業にて支援をしている。
同社は2016年(平成28年度)に、輸出有望案件発掘支援事業(当時)に採択され、セミナー・講演会、貿易投資相談、海外バイヤー招へい商談会、展示会への出展支援等を活用し、独自ブランドの海外展開に成功している。
JETRO(ジェトロ)(独立行政法人日本貿易振興機構)四国内事務所
JETRO 香川日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開に関心を持つ中堅・中小企業へのワンストップの支援サービスを提供している。