高松地方気象台は、香川県を対象とした天気予報、注意報・警報等の気象情報の発表の他、予報中枢官署として四国4県をとりまとめる四国地方における気象業務の要である。気象庁・気象台と聞くと、まず防災が思い浮かび、ビジネスにはあまり関係ないと思われがちだが、気象データをビジネスに活用するための支援も行っている。
IoTやAIの発達により、気象情報のより高度な利用が、産業界における生産性の飛躍的向上につながることが見込まれることから、気象庁では、「生産性革命プロジェクト」として、実際にビジネスを創出していくために、気象データのオープン化、制度の見直し等を行っている。また、平成29年3月に産学官連携により設立した「気象ビジネス推進コンソーシアム」を通じて、産業界のニーズや課題の把握、新たな気象ビジネスの創出・マッチング・人材育成に向けた取組を進めている。当初は加盟企業200社程度からスタートしたが、現在は1000社以上と、高い関心を持たれている。
ある飲食店では、気象と自社の営業データをもとにAIで来客者数を予測するシステムを開発、的中率9割で、店員のオペレーションやサービスの改善が図られ、売上4倍、利益率10倍、給与5万円アップした事例もある。しかし、データはあっても「何のデータをどうやって使ったらいいの?」というように、具体的なところに結びつかない企業が多い。
気象庁が行った調査(令和2年「気象データの利活用状況に関する調査」)によると、自社の事業が気象の影響を受けると考えている企業は約65パーセントあるものの、気象データをビジネスの創出や改善に利用している企業は約13パーセントしかないという結果が出ている。
気象データを、上手く使って業務改善、効率・収益率アップに繋げるためには、気象のこと、経済・事業の両方を知っていて、分析できる人材がいないと進まない。このような人材として、気象庁と経済産業省が連携して養成しようとしているのが「気象データアナリスト」である。企業の内外で人材の育成が進めば、個人の小さな店でも、もっと簡単にメリットを享受できる世界になってくる。
「気象ビジネスに参画している方から聞いた話ですが、IoTやAI等の発達によりビッグデータを扱う技術が発展し、膨大な気象データも組み合わせて扱えるようになったことが高い関心の背景にあります。予測については、不確実性等もあり、使い方には工夫がいりますが、気象データは、過去、現在、未来の3つが揃っているということが大きな魅力なのかなと思っています。気象データについて興味をお持ちいただき、“あ、面白いな”と思っていただければ幸いです。」と野崎台長は話す。
気象データの利活用について興味をお持ちの方、まずは最寄りの気象台にご相談を。
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※掲載の内容は、令和3年5月21日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」は、IT・データを中心とした将来の成長が強く見込まれ、雇用創出に貢献する分野において、社会人が高度な専門性を身に付けてキャリアアップを図る、専門的・実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定する制度。一定の要件を満たすことで厚生労働省より専門実践教育訓練給付金として受講料の最大70パーセントが支給される。
気象庁が気象データの分析のために修得すべき知識・技術(スキルセット)や育成講座の標準的なカリキュラムとして定めた「カリキュラムガイドライン」に適合し、「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」で認定された講座を、気象庁が「気象データアナリスト育成講座」として認定している。