愛媛県伊予郡松前町にある山陽物産株式会社は、1992年に創業、ホテルの客室に備え付けられているハブラシ、カミソリ、ヘアブラシ等をはじめとするホテルアメニティの企画・製造・販売を手がける会社である。国内シェアの約20パーセントを誇っている他、ホテルアメニティで培ってきたノウハウを生かし自社開発の業務用化粧品の製造・販売やOEM製造も手がけている。
1990年代、平らな形状のクシが一般的だった日本のホテル業界にポケットに入る小さなヘアブラシを提案することから始まった。また、アメニティごとにバラバラだった包装パッケージをホテルや客室のロケーション・コンセプトにあわせて、統一したデザインのパッケージで提案するなど、これまでになかった商品、時代の変化にあわせた商品を提案してきた。
「新商品の開発は、社員全員であたっています。私どもで何回も何回もテストして、また、いろいろな会社と協力して作っています。入社して2、3年目の女性社員の作った商品が、大ヒットするようなことも過去に何度かありました。」と武内社長は開発の様子を語る。
2010年頃には、古米、砕米を配合したバイオマスプラスチックに着目、これを原料としたアメニティ開発をスタートさせたが、環境意識が低かった当時の日本ではコスト面が課題となり普及しなかった。
武内社長が日本と世界の地球温暖化問題や環境問題への意識の差を強く感じたのが、約4年前に欧州の提携メーカーが開催する世界会議に参加したときだった。当時の日本企業が未だコストを強く意識していた中、欧州のエージェントは、環境問題に敏感に反応しており、環境に良い商品を作らないと売れないという意識が強かったという。
やがて日本でも、2年ほど前から環境に配慮したアメニティに対する問い合わせが急増し、これまでの開発成果を生かした米35パーセントを配合した歯ブラシ、米20パーセントを配合したヘアブラシ等を含むアニメティセット「バイオマスシリーズ」を商品化した。2022年4月に施行される「プラスチック資源循環促進法」では、ホテル業界もプラスチック製品の削減が求められており、時代が求めるアイテムとなった。
同商品は2021年1月に愛媛県資源循環優良モデル(スゴeco)の認定を受けたほか、愛媛県内の優れた環境保護活動を表彰する第17回三浦保環境賞 愛媛県奨励賞を受賞した。また、米35パーセントを配合しつつ耐久性にも優れた家庭用歯ブラシ「キラグリン」を商品化、2021年10月より全国の主要スーパー・ホームセンター・ドラックストアなどでも取り扱われ始めた。
武内社長は、ホテル業界がコロナ禍前に戻るには、2年から4年はかかると見ている。同社もインバウンドの拡大や東京オリンピックを見越した新工場建設等の設備投資を行っていたが、その生産能力もいまだに発揮できる状態ではない。
そのような中、パートナーシップ構築宣言、健康づくり推進宣言、消費者志向宣言、さらには、SDGs宣言等、持続可能な社会の構築に向けた自社の取り組み次々と宣言している。社員にも色々な気付きの場を整え、行動に少しでも変化があればと期待してのものだ。
また、「地域の元気なくして、会社の成長、社会の活性化はない。」をモットーに、地元の松前町や伊予市内の小学校へ毎年虫歯予防デー(6月4日)にタオルと歯ブラシセットを寄付しているほか、スポーツチームへの寄付、愛媛国体の際には社員全員をボランティア登録するなど会社をあげて応援している。
2020年11月から生産を開始したマスクも、将来、マスク需要が逼迫するようなことがあれば愛媛県に優先供給する協定を締結しており、地元との共生を強く意識している。
地球環境問題への対応のほか、コロナ禍への対応で同社も否応なく変革を迫られた。今後はホテルアメニティだけではなく家庭用商品も増やす意向で、バイオマスプラスチックについても米の配合比率を35パーセントより更に向上させたアメニティ製品の開発も進めており、配合率70パーセントの商品も視野に入れている。将来は愛媛の休耕田で栽培した工業米を配合できればと思いは膨らむ。
逆境にあっても、常に地域や社会に広いビジョンを持ち、数歩先の顧客や社会に利益を還元できる、これからの時代が求める商品開発に挑戦している。そのような社長に影響されるように、風通しがよく活気あふれる社風だという。
武内社長の思いとともに、社員一丸となって時代が求める商品開発が行われている。
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※掲載の内容は、令和3年10月22日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチック資源循環を一層促進する重要性が高まっている。
これを踏まえ、プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般であらゆる主体におけるプラスチック資源循環の取組を促進するための措置として、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が令和3年6月に成立し、2022年4月1日から施行される。