興洋フリーズ株式会社は、1985年に高知市にて創業。OEM・PB加工を得意としている。また、高知県産の養殖・天然魚をメインにした水産加工食品を量販店や飲食店、卸業者向けに製造・販売する他、一般消費者向けにインターネット販売も行っている。加工のしにくい小型魚や価格の安い未利用魚、未利用部位を高い加工技術とニーズとのマッチングで、ニッチな水産加工品とすることにより販路を拡大してきた。
2021年には廃棄される魚の皮を革製品として生まれ変わらせる新たなブランド「Ocean Leather」を設立。魚を最大限に有効活用するユニークな事業展開が注目されている。
イカ加工業として創業したが、近年の世界的なイカ需要の高まりや価格上昇を受け、2007年より高知県産の養殖・天然魚の加工へと事業を転換。2013年に地域産業資源活用事業として、廃棄されていた未利用魚の加工・販売を開始。特に、春口に水揚げされる魚価が低いブリを無添加加工した「ブリハンバーグ」は2016年第4回Fish-1グランプリ(フィッシュマーケットデザイン協議会主催)で審査員特別賞を受賞した。
2017年には仁淀川で養殖されているチョウザメの養殖場と提携。キャビアほどの需要がなく、余り気味だったチョウザメの身を、クリームチーズやクルミなどを混ぜたチョウザメのペーストや熟成刺身として商品化、生の冷燻製などの新しい商品も開発し、量販店やレストラン、一般消費者にも販路を拡大している。2018年からは高知県水産物輸出促進協議会に加盟し、輸出事業へも参入。中国、東南アジア、アメリカハワイに向けてウツボのタタキやトウゴロウイワシ、かつおのたたき、長太郎貝、ブリのカマ等の高知の本当にニッチな水産加工品を輸出して好評を博している。
一方で、コロナ禍による外食産業の低迷を受け、2020年12月から一般消費者を対象としたネット販売事業を開始。ふるさと納税の返礼品への出品を契機に個食用商品272品種をネット販売したところ、巣ごもり需要とマッチしたこともあり、コロナ禍前より大幅に売上を伸ばした。中でも人気を博しているのは、高知ならではの鰹のタタキ。食べきりサイズに加工しているため必要な分だけ取り出せ、ロスが少なく経済的で美味しいと大好評だ。
「例えばマダイ、可食部分は身が45パーセント、それ以外の頭、中骨、内臓、皮、ウロコ等は廃棄しているんです。」商品となる部分が少なく価格も高くなってしまうのが魚加工のネックと高橋社長は話す。これまでも未利用魚や未利用部位を有効利用するための商品開発を進めてきたが、食品ではなく革製品「フィッシュレザー」として生まれ変わらせたのが、「Ocean Leather」代表の高橋大海氏だ。
フィッシュレザーとは、なめし処理を施した魚の革で、匂いは普通の牛革と変わらず、強度は牛革並みかそれ以上で、魚種ごとに異なる質感が魅力だ。高橋代表が釣具店の魚の剥製を見て、魚で革製品を作れるのではないかと思いついたことが始まりで、すぐに自宅倉庫を研究室に改造し開発にとりかかった。英語で書かれた文献を読み手探りで開発を進め、1年で製造工程の確立に成功。2021年にフィッシュレザーブランド「Ocean Leather」を立ち上げた。
「環境にやさしいモノをつくろう」というコンセプトのもと、重金属類を使わない植物タンニンなめしを採用、原材料の魚皮は、興洋フリーズや他の水産加工業者、漁師から調達している。廃棄の費用がかからず逆に収益になると喜ばれている。
「ブリは、ウロコ模様が細かくて手触りがいい。サーモンは均一で連続的な模様で女性に人気です。マダイは大きく魚らしい模様や凹凸感があって一番人気です。チョウザメはごつごつと隆起したウロコが特徴で、マグロは皮の面積が大きいので、革ジャンも作れますよ。」と高橋代表。名刺入れや財布、キーホルダーなど、出世魚にちなんだ縁起ものや贈り物としても人気となっている。
「最近のラーメンブームでラーメン屋さんから「魚の頭が欲しい」と言う連絡をいただいて、頭の部分もエラなどを取って販売しています。皮の部分はラーメンのトッピング材料としてタイへ輸出しています。」未活用の廃棄される魚を次々と商品化してきた高橋社長。
「環境に優しいOcean Leather製品を通して、より海や魚を身近に感じて欲しい。」魚の皮からフィッシュレザーという新しい可能性を見いだした高橋代表。
海からの恵みである地元の魚と食文化大切にしてきた魚のプロフェッショナル達。活躍の場がなかった部分まで資源化することで海と魚への感謝とともに、さらなる有効活用を模索し、続可能な社会の実現へと繋がる新しい可能性を探求している。
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※掲載の内容は、令和4年2月21日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもの。
業況の厳しい事業者や、生産性向上に取り組む事業者に対しても、補助率や補助上限額の優遇により積極的に支援している。