日本は他の先進国と比べてICT教育が遅れ気味と言われており、ICT環境の充実とスキルの底上げが急務である。そのため、教育現場での情報化の推進や情報活用能力の育成として、2019年12月に文部科学省が打ち出した「GIGAスクール構想」、2020年度から小学校のプログラミング教育必修化等によりカリキュラムが開始している。
そのような中、2019年に設立したIT系ベンチャー企業、株式会社AVADが注目を集めている。クラウドサービスを通してAIとIoTを活用したソリューションを提供する事業展開の他、プログラミング教育やものづくりを具現化するシステム「SPACEBLOCK®」を開発。STEAM教育(※参照)の実現と、教育現場でのICT環境の開拓者として寄与している。
(※)STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術・教養)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた言葉で、これらの5要素を特に重視する教育手法のこと。
社名の由良はヘブライ語の「耕す者」。もともと、代表取締役CEOの谷山氏は、兵庫県でIoTを駆使した無農薬いちご栽培の事業展開など、ソフトウェア開発に尽力していた。
光・LEDの拠点として定着している徳島県では、参画教育機関・企業等の協働で、これまでの光部材・製品開発だけの視点でなく、振興及び光関連産業に寄与する統合的知識・技能を有する人材の育成を図っている。そこで2018年度に四国大学が採択された「徳島光・アート教育人材育成事業」にて、谷山CEOが四国大学特任研究員としてICTやAIを活用したアート・デザインを担当することになった。
その後、徳島県内で法人化し、コンソーシアム代表企業として参画、日本の教育課程に対応した日本初のプラグラミングシステム「SPACEBLOCK®」を同大学と共同開発した。文部科学省情報ひろばでも、「四国大学Blue2@Tokushimaプロジェクト」として活動や実績の展示会を行うなど、光・アートの応用とプログラミング教育の融合の好事例として紹介されている。
教育現場で利活用されている「SPACEBLOCK®」は、クレジットカード半分程度の面積に集積されたマイコンボードを中心としたハードと専用アプリケーションによるシステム。小型でも高機能で、様々なセンサーやモジュールなどと接続することで汎用性と拡張性が期待される。
専門的な知識がなくても直感的に操作ができるユーザーインターフェイスと、すぐに実装できる手軽さで、小学生でも遊び感覚で自由にプログラミング体験ができるため好評だ。光や音などの動的な体験、デジタル作品の設計・製作、計測や制御、データの利活用等、作業を通した思考の育成やそれらを使った地域・社会の問題解決等、成長に応じた習熟や応用が可能である。
また、STEAM教育とも親和性が高く、様々な要素や手順を論理的に考える思考の育成の後押しにもなっている。それらに関心の高い教育機関や自治体を中心に同プログラミングシステムを普及し、教育分野におけるイノベーション推進やコミュニティの醸成等を提案しながら、グローバル展開も視野に入れている。
谷山CEOのビジョンは「誰一人取り残さないのために、自ら新しき場所を創作できるチカラを持つ手段を提供すること、誰もが今まで見たことのない、しかし誰もが夢見る新しき場所:SPACEを創ることに寄り添うこと」である。何事にも心を尽くし、情熱を尽くし、力を尽くし、知恵を尽くすことで、どんな想いも実現でき、それぞれの目標や課題解決に向けて自分のペースでじっくりブロックを積み上げることで、人と人や、人とモノの空間を満たし、競争社会とは違う達成感に繋げることが狙いである。
また「教育は農業に通じる部分がある」と言う。成果物になるためには、地に足を着けた丁寧な土壌づくりや十分な成長期間が必要不可欠で、教育を通じて持続的にプログラミング思考を育んでいくことで、20年、30年後の子どもたちの財産になると捉えている。
これまでITリテラシーは専門家が中心であったが、デジタル化推進により一般的になりつつある中で、「SPACEBLOCK®」で得る概念の理解や動機付けは可能性を広げる種である。自由で無限大にひらめく子どものチカラを最大限に活かすことで、誰もが自分らしい花を咲かせ、あらゆる分野でミライを拓き、実り多き世界の実現を予感させる。
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※掲載の内容は、令和4年10月21日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
学校等教育現場における先端的教育用ソフトウェアを導入する事業を実施するEdTech事業者に対する事業費等に要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、EdTechツールの学校等教育機関への導入を促進し、学校等設置者等と教育産業の協力による教育イノベーションの普及を後押しすることを目的とする。
なお、本事業ではEdTech導入の面的普及をこれまで以上に推進するため導入実績が少ない自治体への支援を重点的に行う。