西染工株式会社は、愛媛県今治市で事業を展開し、地場産業であるタオルをはじめとする繊維製品の染色加工を手掛け、特に、それぞれに強い癖を持つ天然素材を均一な品質で大量に染め上げる技術は高い評価を受けている。
近年は、社内で染め・織り・縫製・仕上げまでを一貫して行うことができる体制を構築し、品質・機能・デザイン性の高い自社製品の開発・販売にも力を注ぎ事業領域の拡大を図っている。さらに、新たな挑戦である「今治のホコリ」で、アウトドア業界でも旋風を巻き起こしている。
持続可能な社会の実現のために染色技術・製品開発を通して、社員一丸となり省エネや環境への配慮に取り組み、人にも地球にも優しい取り組みが注目を浴びている。
タオルの製造工程においての染色の役割は、製織準備の前にある前処理としての染色と糊付け、製織後の後処理としての糊抜き等がある。手間や時間がかかり、タオルの要となる手触りや風合いを大きく左右する。従来は染色加工を請け負っていたが、収入の安定化を図るため、織機、整経機、縫製用ミシン等の導入を進め一貫生産体制を構築した。
同社は「染まるものは何でも染めてみる」をモットーに、染め屋にしか作れないものを作ってみようというコンセプトを持ち、自社製品の開発に果敢に挑戦している。社員からのアイディアを取り入れ、普通のタオルではなく、機能性の高い優れたオリジナル商品を多数開発した。
プラチナナノ加工により優れた抗菌・消臭効果を持つ商品「PLATINUM WET TOWEL(プラチナウムウェットタオル)」シリーズ、「におわないフェイスタオル」、「におわないバスタオル」、「におわない大きなタオル」は、放置臭や生乾き臭のストレスがない上に、高品質、高機能、吸水性、コンパクトさを兼ね備えたワンランク上の商品。特に「PLATINUM WET TOWEL」は、スタイリッシュな見た目も好評で、2018年度の「OMOTENASHI SELECTION(おもてなしセレクション)」では金賞を受賞した。
鮮やかな色が目を引く着火剤「今治のホコリ」は、キャンプ愛好家の中で大きな話題となっている。この正体は、タオルの製造工程である染色加工後の乾燥工程で使用する乾燥機のフィルターに付着する埃だ。可燃性で、放置しておくと火災の原因になるため一日に何度も除去しなければならない厄介者で、従来は廃棄していた。そこで、燃えやすいという特性に着目し着火剤として商品化に着手。これは、福岡部長の趣味であるアウトドアへの熱い思いが講じた逆転の発想であった。
そのカラフルな埃は、SNSでの見栄えも良く、センスの光るネーミングも相まって人気を集め、さらに、天然素材を利用しているために灰や有害な煙が出ないメリットや、廃棄物の再利用なので環境負荷への低減になることが多くの共感を呼び、確実に売り上げを伸ばしている。プロジェクトの姿勢が高く評価され「グッドデザイン賞2022」を受賞した。
また、これを中心にアウトドアブランド「THE MAGIC HOUR(マジックアワー)」を展開。瀬戸内ネイティブ柄が目を引く「Cotton Blanket(コットンブランケット)」や「Schlaf Cushion Cover(シュラフクッションカバー)」、持ち歩けるおしぼりタオル「Pt wet towel(プラチナウェットタオル)」など、キャンプでの活動に欠かせないラインナップが揃っている。
同社は、省エネルギーやものを作る責任など、環境への意識が高いことでも知られている。特に、平成20年にボイラーの天然ガス化に踏み切ったことで、床の油がなくなり黒煙も出ないクリーンな環境が整った。当時のことを「設備投資をしたため資金面での余裕がなくなったが、安全性が向上し心配が減った。色んなものを染めてみようという発想の転換など、心に余裕ができた。」と山本代表。商品開発の原動力になっているようである。
これまで同様の、ユーザが求める細かなニーズに応え、丁寧な商品作りと適正価格での安定した供給に尽力するだけでなく、繊維業界や日本のものづくり精神にもっと可能性を感じており、その良さを海外にも展開したいという。そのためには、特にヨーロッパにおいては環境への配慮がマストであり、パッケージ素材をはじめとする次の課題に向けてすでに研究を始めている。
「THE MAGIC HOUR」は、薄明けの瀬戸内海に浮かぶ島、海、空の大自然が創り出す豊かな色彩、刻一刻と変わりゆく空の色が何層にも重なる、魔法にかかった美しさの時間を表している。染まりゆく糸や創り出される色彩の世界観のようでもあり、日本のものづくりの「ホコリ」が世界をJapanブランドに染める日の到来を感じさせる。
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※掲載の内容は、令和5年1月23日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
繊維産業における環境変化を踏まえ、産業としての進むべき方向性や今後の政策を、「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」として取りまとめ、優れた技術力やデザイン力を持つ企業や、優れた取組をしている企業の取組が広く認知され、さらなる新しい連携・製品開発等を推進することが可能となるよう、「次代を担う繊維産業企業100選」として選定した。
有識者による審査委員会での審査を踏まえ、四国からは、8社が選定されている。
中小企業庁では中小企業者等が、海外展開やそれを見据えた全国展開のために、新商品・サービスの開発・改良、ブランディングや、新規販路開拓等の取組を行う場合に、その経費の一部を補助することにより、地域中小企業の域外需要の獲得を図るとともに、地域経済の活性化及び地域中小企業の振興に寄与することを目的として、「JAPANブランド育成支援等事業費補助金」を実施。
「令和4年度海外展開のための支援事業者活用促進事業費補助金(JAPANブランド育成支援等事業)」では、厳正な審査の結果、四国管内において2件採択された。