第26回

令和6年2月22日 発表

シマ 株式会社

環境プラント設備のプロフェッショナルが描く、家電で革新する環境問題


シマ株式会社 社屋 写真
シマ 株式会社 社屋

家庭で出た生ごみを「パリパリ」に乾燥させる「パリパリキュー」は、香川県観音寺(かんおんじ)市のシマ株式会社が開発・販売する生ごみ乾燥機。2020年には、国際的に権威のある「GERMANデザイン賞2021特別賞」をはじめ、日本を代表するデザイン賞「グッドデザイン賞2020」など、性能とデザイン性の高さから国内外に多数の受賞歴を持つ。

同社は、1952年に島商店として創業。1963年、前身の島産業株式会社の創立以来「環境」をテーマに、環境プラント設備のトータルエンジニアリング事業を中心に展開してきた。具体的には、リサイクル施設や粗大ごみ処理施設などの設計施工、付随するコンベアなどの設備機器や破砕機といった産業機械の設計製作を行っている。工場を持たないファブレス経営を採用した従業員47名の少数気鋭のプロフェッショナル集団であり、直近20年ほどで日本各地160件以上の施設を手掛けた実績を持つ。

使いやすさと安全性を追求した生ごみ乾燥機

代表取締役社長 島 直幹 氏 写真
代表取締役社長 島 直幹 氏

2013年から一般家庭向けの生ごみ乾燥機市場に参入し「パリパリキューブ」を販売。改良を加えた「パリパリキュー」は2020年に販売を開始した。発売以降、国内外で各賞を受けているのは前述のとおりである。

プラント建設事業で培った技術を活かし、60から80度の温風が内部を循環することで、生ごみを乾燥させる。処理後は重量が約5分の1まで減るためかさばらず、独自開発の活性炭脱臭ユニットを組み込むことで、乾燥中も生ごみのにおいがほとんどしない。乾燥した生ごみは有機質肥料としても使用可能である。

現在の製品に至るには数々の試作と、ユーザーからの率直な意見が積み重なっている。作る側の理想があっても「日々の暮らしの中で使いやすいもの」ではないと実際の購入にはつながらないと、性能だけでなく手入れのしやすさや製品安全にも力を注いだ。危害要因となる熱エネルギーの制御を特に意識した製品設計を心掛け、転倒の際に動作が停止し、加熱部が発火を引き起こす温度まで上昇しないといった機能を実装している。安全性の高さから、2023年11月には経済産業省「製品安全対策優良企業表彰」を受賞した。(全国で8企業受賞)

地球環境問題に関する研究から生まれた「パリパリキューブ」「パリパリキュー」

国内外で各賞を受賞する「パリパリキュー」
国内外で各賞を受賞する「パリパリキュー」

環境プラント設備にトータルで関わるということは、様々なごみ問題と関わることでもある。最終的な処理方法だけではなく、家庭から出る生ごみにアプローチして、ごみの排出量削減につなげたいという熱意が開発の根源にある。契機の1つは、2005年に地球環境産業技術研究機構(RITE)が主催する技術開発促進事業の技術開発の共同研究に採択されたこと。2005年から2007年の間、前代表取締役(現取締役)島 憲吾 氏が中心となり、家庭ごみの流通・処理における環境負荷低減技術の研究を行い、その際の論文が製品の礎となっている。

「家庭から出る可燃ごみのおよそ半分が生ごみ、生ごみの約80パーセントは水分。乾燥していない生ごみは大量の水を燃やしているようなもので運搬・焼却において非効率で無駄が多いです。社会課題でもある『ごみの排出量削減』『CO2排出量削減』には家庭ごみへのアプローチが重要です」と代表取締役の島 直幹(なおまさ)氏。

環境にやさしいごみの捨て方を、文化として根付かせたい

島 直幹氏と取締役 島 憲吾氏
島 直幹 氏と取締役 島 憲吾 氏

家庭向け生ごみ処理機の市場が興隆したのは90年代後半。島産業が参入した2010年代には低迷した市場となっていた。それでも「環境負荷の低減につながる新たな家電製品を定着させたい」との思いから製品の改善を続けた。環境問題への意識が高まりつつある時代の追い風も受け、販売場所は、ネットストアや全国の大手家電量販店、テレビ・カタログ通販などへ広がり、売り上げも会社全体の約2割を超える事業に成長を遂げている。

「現在普及率が5パーセントに満たない生ごみ乾燥機の市場を、20から30パーセントまで成長させたい。その上でやっぱりシマの商品がいいよねと認識いただくことが、会社の発展にもつながると考えています」そう先を見据える島代表は「生ごみを乾燥させること」を文化として根付かせたいと意気込む。生ごみ乾燥機の普及活動に力を入れ、雑誌や新聞など各種メディアで積極的に情報発信を続けている。
「中小企業として、どこまでもチャレンジ精神を持ち、新しいことに挑戦していきたいです」という島代表の言葉どおり、今後の展開を見据え新モデルの開発や、海外への販路拡大など新しい取り組みも続く。自前のリソースで新たなチャレンジをする過程で生まれたパリパリキューブとパリパリキュー。環境負荷削減を目指して始まった研究と、その後15年かけて培った経験は、同社の更なる挑戦を力強く支えている。

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Date
企業データ

名称
シマ 株式会社
所在地
香川県観音寺市
事業内容
環境プラントエンジニアリング、資源リサイクル施設・粗大ごみ処理施設・設備機器の設計・製作、家庭用小型家電の研究・開発・製造販売
受賞歴、政策の活用等
    経済産業省他
  • 「第2回 蔦屋家電+大賞」受賞(2022年)
  • 「グッドデザイン賞」受賞(2020年)
  • 「日本子育て支援大賞」受賞(2021年)
  • 製品安全対策優良企業表彰(2023年)
  • 地域未来牽引企業
    国外(ドイツ)
  • 「Red Dotデザインアワード」受賞(2020年)
  • 「iFデザインアワード2020」受賞(2020年)
  • 「Germanデザインアワード特別賞」受賞(2021年)
ウェブサイト
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お問い合わせ
電話 0875-63-4111

※掲載の内容は、令和6年2月22日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。

Point
ワンポイント解説

製品安全対策優良企業表彰

製品安全に積極的に取り組んでいる製造事業者、輸入事業者、小売販売事業者、各種団体をそれぞれ企業単位で広く公募し、厳正な審査の上で、「製品安全対策優良企業」として表彰するもので、各企業が扱う製品自体の安全性を評価するのではなく、企業・団体全体の製品安全活動に関する取組について評価している。

2023年に表彰を受けたのは全国で8企業で、同社は中小企業 製造事業者・輸入事業者部門 優良賞(審査委員会賞)を受賞した。

関連サイト

製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)ウェブサイト別ウィンドウで開く
令和5年度の受賞企業紹介(製品安全対策優良企業表彰ウェブサイト)別ウィンドウで開く