女性の笑顔で地域を元気に!
「すさき女子」
竹中佳生子さん 有限会社丸共味噌醤油醸造場 http://jozojo.com/(写真左から1人目)
市川かおりさん 焼き鳥 鳥よし(写真左から2人目)
上野伊代さん 須崎市地域おこし協力隊(写真中央)
佐々木かおりさん 地域移住サポーター(写真右から1人目)

地元の女性がガイドをする「すさき女子と歩く、須崎ちょこぶら60分」、浴衣姿で楽しむ「浴衣ではんなり女子じかん」、古民家を活用した「すさき七夕かざり」…など、高知県須崎市では、女性目線のユニークで楽しいイベントが多数開催されています。企画しているのは、「すさき女子」と呼ばれる元気な女性たち。その中心人物である須崎市地域おこし協力隊の上野さんと「すさき女子」の皆さんにお話を伺ってきました。

-上野さんが、須崎市地域おこし協力隊になったきっかけを教えてください。 上野さん 新卒で入社した会社で3年半ほど、編集や企画営業に携わり、様々な職種を転々としたのち、須崎市にたどり着きました。4年前、浦ノ内地区住民会議という地元の自治組織に務めたことが転機となり、青年団の立ち上げや地域活性化イベントに関わりました。その中で須崎市の方々とのつながりができたことで、須崎のまちに魅力を感じ、まだまだ伸びしろのあるおもしろいまちだと気づき、また須崎市で仕事がしたいと思っていたところ、ちょうど2期の協力隊の募集があり応募しました。 -この地域の魅力って何ですか? 上野さん ありきたりですけど・・・一番の魅力はやっぱり人。特に須崎市は女性が元気で面白い。他にもまちの中にもっと伝えたらいいのにと思う場所やモノがたくさんあって、それを外に向けて発信出来ていないなと感じました。まだ広く知られていない地元のいいもの、魅力的なものが沢山あるということはまちのアピールをする甲斐がありますし、もっと色んな人に興味を持ってもらえるまちになるんじゃないかなって思っています。

- そのアピールの方法の一つが企画されているユニークなイベントだと思いますが、イベントに対する思いやこだわりはありますか? 上野さん 1番は自分たちがやって楽しいということです。実施するまでは苦労することもありますが、参加者だけでなく、出店者や主催した側もやってよかったと思えるものにしたいです。そのためには、きちんと地域の人の協力が得られるものにしたいと思っています。集客数も大事ですが、より質にこだわりたいと考えています。どの地域でも開催できるイベントではなく、このまちでやるから意味があるイベントに仕上げたいですね。
イベントは「一過性のもの」と言われることもありますが、ただの人集めではなく、イベントを通じて、気持ちを育てることを意識しています。訪れたひとが喜んでくれた生の声を聞くことで地域の魅力や自分の町に対する誇りや愛着を再認識してもらえるように取り組んでいます。
- イベントの開催は体力も気力もいりますよね。 上野さん ボランティアで一緒に運営していただいている人もいる中で、私は地域おこし協力隊として給料をもらっています。その意識は忘れないようにしています。 そして何より、地域の大好きな人たちのためだから頑張れます。須崎市出身でない自分が活動していても、いろんな人が支えて、受け入れてくれるんです。そういう人たちに喜んでもらえるもの、笑顔になってもらえるものにしていきたいという思いが原動力ですね。須崎のためというより、須崎に居る大好きな人のためと言った方がしっくりきます。

- 上野さんの周辺には最近「すさき女子」と呼ばれる元気な女性たちがいますが、どういった集まりですか。 上野さん 元々それぞれがブログなどを使って地域の情報発信をしていたんですが、ブロガー会など顔を合わせる機会が増え、一緒にイベントを開催するようになりました。そこから派生して「すさき女子」と呼ばれる、ゆるやかな女性のコミュニティとして活動の幅が徐々に広がってきています。できるときにできることを協力しあう関係。そして、自分の居場所のようなコミュニティです。

- 「すさき女子」の皆さんにもお聞きします。
- そもそも「すさき女子」とは何ですか? 市川さん 「すさき女子」に決まりや資格はありません。須崎が好き、須崎に住んでいる女性であればみんな「すさき女子」です。ゆるやかに始まった集まりで、友達同士の活動の延長に周りの人を巻き込んでいっています。上野さんが上手に表現して、対外的に目に見える形にしていった結果、「すさき女子」として名前が広がりつつあります。

佐々木さん 対外的に確立したのは2013年の第1回アーティストインレジデンスですね。すさき女子のメンバーがスタッフをしていたんですが、関連行事として「すさき女子と歩く、須崎ちょこぶら60分」を企画したんです。それぞれが、歴史や食べ物など得意分野のまち歩きを6コース実施し、多彩なメニューからお客さんがチョイスできるものになっていたことと、地元の女性が案内するということで、多くの方に興味をもっていただきました。地元の人だから知っているモーニングや、炊飯器を持って歩いて干物屋の店先で干物を食べるとか、地元の女性だからお店側もサービスしてくれるものってありますよね。そういったものを体験してもらい大盛況でした。

- メンバーはどのような人がいるんですか? 上野さん 規則も何もないので、メンバーが誰とか何人とか把握してないです(笑)。主婦や焼き鳥屋、しょうゆ屋女将など様々で、普段はそれぞれが個人のことをしていますね。「すさき女子」として事業を決めてやるのではなく、頼んでなくても協力しあえる関係なので、事業ごとに関わるメンバーが違います。 - まち歩きの他にも「浴衣ではんなり女子じかん」という女性らしいイベントや、古民家を使った「すさき七夕かざり」など楽しい企画をたくさんされていますよね。 竹中さん こんなことが須崎にあったらおもしろいよね、という雑談から実現させてしまうんです。自分たちが楽しいと思えることを、できることをできる人がして、協力しながら形にしていっています。


市川さん あとは、家族や地域、市長も応援してくれるので、実行に移していけます。利益云々ではなく、女性が頑張っているっていうのは、応援、協力しやすいのかもしれません。
人を集めようと思って活動しているのではなく、面白いと思ってくれた人が興味を持って寄ってきてくれて、注目されるようになりました。 - 話を聞いていても感じるのですが、本当に元気な女性ばかりですよね 佐々木さん それぞれ個性あふれていると思います。アーティストインレジデンス 須崎では、県外アーティストさんなど訪れた方との交流、おもてなしを「すさき女子」が買って出てくれました。

接した須崎の女性の強さ、やわらかさやそれだけではない背景に抱えているものを感じて、第2回には須崎の女性をテーマに作品を作りたいというアーティストさんもいて、できた作品が「エイトボールズTシャツ」です。今年10月17日から始まった第3回アーティストインレジデンスにも手弁当で参加してくださるということで感謝しています。「すさき女子」をきっかけに地元のファンが増えるのはうれしいですね。

- 自分たちにとって「すさき女子」とは何ですか? 竹中さん 気が付いたら「すさき女子」という総称になっていたので考えたことなかったですが・・・改めて考えるとパワースポットというか、仕事、家族、生活などいろいろな相談ができる関係で、心強く、安心感のある「自分の居場所」です。充電できる場所、なんでも話せる仲間ですね。 上野さん 特に仕事、家族、生活が密に関わりあって生きている女性にとっては、こういったコミュニティがあるのは大切だと思います。 - 最近「すさき女子」と言われるようになって変化などはありますか? 市川さん 特に自分たちに変化はないです(笑)。ただ、自分たちの行動でまちが元気になってくることはうれしいですね。「すさき女子」というネームバリューができてマスコミや紹介する側も体現しやすいという点では、「すさき女子」という名前は須崎の元気な女性を表現する象徴的な言葉で、PR効果もあると思います。
また、須崎市は「海の町」という男性的なイメージが強いまちですが、「すさき女子」という女性的なイメージも加わることでまちの新しい一面が作り出されていると感じます。

上野さん 今年9月末に開催した「四国女子会」は個人で企画できるものではなく「すさき女子」の名前があるから開催できたんです。「すさき女子」と自分たちで言うことで、アファメーション(自己宣言)というか自覚が生まれます。個性を尊重しながらも、自分たちが楽しいと思えることを行い、それを地域につなげていく。こういった流れを地域の若い人や四国にもつなげていけるといいなと思っています。

- 上野さんは、今年度地域おこし協力隊3年目を迎えますが、今後はどのような活動をしていきたいですか? 上野さん 須崎に残れたらいいなと考えています。今、まちがいい状態に変化しているなと感じます。3年前は地域活動をしている人も少なく、消極的な発言やほかの地域をうらやむ声が多く聞かれました。今では、地域活動をしている人が増え、相互に協力しあう環境ができつつあります。女性同士だけでなく、男性とも同年代のネットワークや横のつながりが生まれ、それぞれ意識も変わり、地域を盛り上げていこうという流れができています。この流れを維持しながら年代に関係なく新しい人たちも加わっていくようなサイクルができたらいいですね。


また、イベントに限らず、まちのことを「自分ごと」と捉えて地域活動に関心を持てるような関係性が町中で少しずつでも生まれていくと嬉しいですね。誰かがやろうと声をかけたら、集まって、実行できる関係。「やらないかん」ではなく「それってまちに必要やき、みんなで一緒にやったらいいよね」って自発的な。
そういった地域環境の変化のきっかけを生みだし関わっていきながら同じような想いを持った人たちとのつながりを須崎市だけなく四国内に作っていけたら、と思っています。

掲載日:2015年11月18日 取材者:M・N