インタビュー

株式会社塵芥センター 代表取締役
溝淵 誉仁 様
会社のご紹介
株式会社塵芥センターは香川県高松市に本社を置く、廃棄物の収集・運搬から最終処分までの廃棄物処理の全工程を一貫体制で行う事業者様です。同社は2018年にBCP(事業継続計画)を策定され、加えて「事業継続力強化計画」も認定されており、積極的な取り組みをされていることから、溝淵社長にインタビューさせていただきました。

──BCP(事業継続計画)を策定されたきっかけは?
最初から事業継続を目的に作った訳じゃないんです。BCPを策定したら会社のイメージUPに繋がるんじゃないかな、という程度。こんなところから始まったのです(笑)。もちろん、こんなことを考えていたのは経営陣だけでした。
BCPを策定するにあたっては、BCPコンサルタントの力を借りたのですが、計画作りに半年かかり、そして実際の卓上訓練や初動訓練を行えるレベルに仕上げるまでに、さらに半年をかけて取り組みました。でも、この過程がとても良く、当初は「PR活動のひとつ」と思って始めたものが、訓練を実施していくごとに「これって会社にとって本当に大切なことだよね」と徐々に思いの入れ方が変化していきました。
ですのでBCPの策定で大切なことは、策定の動機は何でもいいので「最初の一歩踏み出せるかどうか」だと思います。弊社としてあの最初の一歩を踏み出せたことはとても大きな一歩だったと今でも思います。
──どのような気持ちの変化があったのですか?
最初は会社のイメージ戦略であったものが、BCPの取り組みで自然災害を勉強するうちに「社員を守る、家族を守る」ということが最も大事なことだと気づきました。会社を守る前に社員と家族を守ることこそが全ての基礎になると。そうなると経営陣だけではダメで、これは社員に伝えなければという想いで、多くの社員を巻き込んで「防災士」の資格を取得することにしたのです。
はじめは50人ぐらいで資格を取得したのですが、これが社員の気持ちを変える大きな転機となり、今では90名近くの防災士が在籍しています。経営陣だけじゃなく多くの社員が「社員を守る、家族を守る」ということに本気で共感してもらえて同じ目線に立てたのです。
──多くの方が「防災士」を取得して社内にどのような変化がありましたか?
防災士として最も大事な事として、まずは自助「自分の命は自分で守る」、次に共助「家族を含めた近くの者を守る」があります。自分と家族、そして近しい人が元気であればこそ、仕事に復帰することができるのです。BCPって事業継続計画ですから、生きている事が前提ですよね。だから、まずは命が何よりも大事、BCPの計画を実行する前にまずは命をどうやって守るのか、ということに多くの社員が気づいたのです。
現在、当社の85%は防災士の資格を保有していて、若手や新入社員は全員取得しています。BCPを策定することは大事ですが、BCPの内容を実行するための条件=生きているためには?というところで常に見直しを繰り返しています。だから、策定したBCPという行動計画そのものはそれほど大きく変化していません。
──社員皆さんが自分のこととして行動しようと考えてくれているのですね。
はい、その通りです。防災士を取得することでいろいろなことを学ぶことができました。そして、自分や家族を守ることが会社を守ることにつながり、そして廃棄物処理という事業を行っている立場から、災害が発生したときには社会のために事業を継続していく必要があるということを全員共有することができました。会社としても、本社が災害対策本部として機能出来るように、太陽光発電装置や大型蓄電池、井戸、軽油発電機を設置しています。
加えて、非常時の車両燃料を確保するための燃料備蓄タンクを設置する予定です。また、避難宿泊場所としても利用できるように、災害用備蓄庫(非常食や非常日用品)、避難宿泊用具、炊き出し機材なども備えており、まさにBCPを実行できるような環境整備が揃ってきております。
また、年に一度は必ず全社員合同の防災訓練を実施し、その他にも電気と水道の元栓をOFFにして、大規模災害時を想定した避難宿泊訓練も行っています。そしてこれからは、社内だけでなく地域を含めた安全・安心を目指していけるように、地域のコミュニティセンターと協力して、防災・減災の活動にも積極的に参加していこうと考えております。
──これからBCPや事業継続力強化計画を策定しようと考えている事業者様に一言お願いします。
一番言いたいことは「自分の大切な従業員を守りたくないですか?」ということです。BCPなどの計画は一つの道具です。計画を実行するための細かな行動をどのようにしていくのか、ということが大切で、繰り返し検証と見直しを行っているのです。弊社はBCPを作ってからいろいろと考えることができました。一つのきっかけになりましたから、策定して良かったと今でも思っていますし、今後もBCPを実行するための細かな行動などを見直して行きたいと考えています。
これから策定される事業者様だとしても、まずは自然災害を想定した初動訓練だけは絶対にやってみてほしい。やっているのとやっていないとでは全く違うと思いますから。火災時の訓練を例に出すと、定期的に火災訓練をしている会社では初期消火の確率がグンと跳ね上がるそうです。大規模災害時にでも最初の行動さえ正しくとることが出来れば、あとは経営陣などの先導する者がいれば何とか乗り越えられることができるはずです。
誰も被災することなく業務に復帰できるような会社つくりこそが強靱な企業に繋がり、地域内でも強靱な企業が増えるようになれば、社会を強靱化することができます。多くの事業者様にこの考え方が共有できれば嬉しいですし、同業他社の皆さんや行政とも連携しながら今後も非常時に役に立てる会社を目指したいと思います。
(2024年3月27日掲載)
〒760-8084 香川県高松市一宮町1686番地6
