インタビュー


高知県 商工労働部商工政策課
課長 太郎田 弘志 様
チーフ 溝渕 旭 様
災害に備えた対策を考えてもらいたい
──高知県のご担当者に話を伺ってきました
近い将来に高い確率で発生すると予測されている「南海トラフ地震」、最大クラスの地震(マグニチュード9.0)が発生した場合、県内全域で震度6弱から7の強い揺れや、一部地域では全国最大規模の津波が予想されています。
高知県では早くから南海トラフ地震を想定した行動計画を策定し、できることは全て行う強い意志のもと、県民の皆さま、そして事業者と共に緊急時に備えた活動に取り組んでいます。高知県内の状況や最近の取り組み状況などを伺ってきました。
──まずは、高知県としての取り組み方針を教えてください
本県では、死者数約42,000人と想定されている南海トラフ地震に対して、想定死者数を限りなくゼロにすることを目指し、南海トラフ地震対策に取り組んでいます。
取り組むにあたって、県や市町村、事業所をはじめ県民がそれぞれの立場で実施すべき具体的な取組をまとめた、トータルプランである「高知県南海トラフ地震対策行動計画」を策定しています。
行動計画は、揺れや津波から「命を守る」対策、助かった「命をつなぐ」対策、復旧・復興期の「生活を立ち上げる」対策の3つのステージ毎に、様々な対策を位置付けた計画であり、PDCAサイクルにより見直しが行われます。
このように、行動計画に基づき取組を進めてきたことにより、令和4年3月には、想定死者数を79パーセント減の約8,800人まで減らすことができました。現在、令和7年3月までに90パーセント減の約4,300人を目指して、取り組んでいます。
取組を進めるにあたっては、県や市町村が行う公助に加え、自助・共助のさらなる取り組みが必要不可欠であるため、住宅耐震化や火災対策などへの支援を充実するとともに、自助・共助の重要性や制度の周知など、啓発の強化にも取り組んでいます。
──県内事業者における事業継続計画(BCP)の策定状況はいかがですか?
高知県は、地震以外にも、台風による風水害などが多く発生してきた地域であり、県内事業者の自然災害に対する危機意識や備えは、他の地域より高いと考えています。例えば、民間の調査会社が公表している、事業者の事業継続計画(BCP)の策定状況調査では、高知県内の事業者のBCP策定率は、全国平均や四国平均よりも高くなっています。
県で把握している商工業者のBCP策定率でも、約80パーセントの事業者が策定されています。一方で、時間や人員の不足を理由とする策定率の伸び悩みが課題となっています。
商工業者以外にも、建設業や病院など、様々な業種に対してBCP策定支援の取組を進めていますが、規模が大きい事業者はもちろんのこと、小規模な事業者まで、災害に備える対策を考えてもらいたいと思います。
──事業継続計画(BCP)の策定に向けてどのような支援をされていますか?
県内事業者の皆さまに対しては、BCPの策定や見直しのための講座を繰り返し実施しており、他の地域で起こった災害の教訓も踏まえながら、特色ある内容となるよう心がけています。加えて、簡易版BCPとも呼ばれる事業継続力強化計画の策定講座も実施しており、講座終了後も、完成までフォローさせていただいております。
また、災害時に最前線で活躍することが期待される建設業においては、通常のBCP策定が難しい小規模な事業者向けに、県独自の「高知県建設業超簡易版BCP」という制度を設け、緊急連絡先や備蓄物資の状況など、最低限決めておくべき項目のみをまとめていただくようにしています。
様々な業種において策定が進むようなご支援をさせていただいており、まずは第一歩を踏み出していただけると嬉しいです。

従業員の命、会社、雇用を守るために
──BCPなどの計画を策定するメリットを教えてください
最も大きなメリットは、計画を策定する目的でもありますが、「従業員の命を守る」こと、「顧客や取引先に供給責任を果たす」こと、これによって「会社と雇用を守る」ことです。
加えて、直接的なメリットとしては、たとえば簡易版BCPとも呼ばれる事業継続力強化計画では、国の認定を受けると、低利融資や税制優遇、補助金の審査時の加点など、様々なメリットがありますので、ぜひ認定を受けていただきたいと思います。
高知県独自の取組としては、学生の県内就職活動に役立つ情報を発信するポータルサイト「高知求人ネット 学生サイト」を運用していますが、企業紹介ページにおいて、BCP策定事業者であることや、事業継続力強化計画の認定事業者であることを示すロゴマークを表示するようにしています。人手不足が深刻化していますが、災害に備えて従業員を守る取組を進めている事業者は、積極的にPRしていきたいと考えています。
──今後のことや県内事業者の皆さまにお伝えしたいことがあればご紹介ください
高知県としましては、南海トラフ地震対策行動計画に関する取り組み状況について、実施状況をチェックするとともに、改善していくPDCAサイクルの取り組みを継続的に行っています。
BCPについては、策定ができていない事業者、特に小規模な事業者の方々にも、策定に向けた支援やフォローを丁寧に行ってまいりますので、まずはお気軽に連絡いただければと思います。
すでにBCPを策定済みの事業者の方で、訓練講座と合わせて策定講座を繰り返し受講し、計画を不断にブラッシュアップしている取組事例があります。このようなニーズにもしっかりお応えできるよう、講座の内容を充実させていきたいと思います。
(2024年3月27日掲載)
インタビューを終えて
降り注ぐ太陽、豊かな緑、そして光り輝く太平洋。いつもの何気ない日常、最高の自然環境に囲まれている高知県。瀬戸内側からお邪魔するたび大自然に癒されます。しかし、遠くない先に起きると言われている南海トラフ大地震。癒してくれている大自然が突然牙を向くかもしれません。高知県庁の方からたくさんのお話を聞いて学んだことは、正しく恐れ、正しく準備すること、そして万が一の時は皆で助け合うということです。いざという時に最も大切なことは共助の精神。『高知県は、ひとつの大家族やき。高知家』