インタビュー


徳島県商工会連合会 事業継続力強化支援コーディネーター
樫原 誠治 様
配属先 美波町商工会のご紹介
徳島市から南へ約50キロメートル、ウミガメが産卵にやってくるという海のきれいな町「美波町」。美波町で中小企業・小規模事業者の経営全般をサポートされている美波町商工会に「事業継続力強化計画」策定のご支援に力を入れられている方がいらっしゃると聞いて、インビューしてきました。
「自分で考えるしかない」から始まりました
──どのようなきっかけで「事業継続力強化計画」の策定支援を始められたのですか?
美波町商工会の樫原と申します。おっしゃるとおり、事業継続力強化計画の支援に力を入れています。きっかけは皆さんも経験された「新型コロナウイルス」ですね。ちょっと経緯をお話しますと…私は長年、中小企業・小規模事業者の経営支援を行ってきて、いろんなノウハウはあると思うのですが、感染症対策ということについてはそこまで知識はありませんでした。2020年のはじめ頃から新型コロナウイルスが広まり始めましたよね。みなさん職場ごとにいろいろと考えて対策を採られたと思うのですが、私たち商工会にとっても初めての経験で、何をどのようにしたらいいのか、全く分からなかったのです。
そこで、「感染症対策行動計画」を作製すべく、私たちの上部組織である徳島県商工会連合会に問い合わせてみたのですが、こちらも同様の状況でよく分からず、さらに上部組織の全国商工会連合会へ問い合わせてもらったのですけど、こちらも同様、市役所、県庁・・・どこに聞いても作成しておらず、分からなかった…じゃあ、自分で作るしかない…となったわけなのです。2020年初秋の頃でした。
──「自分で考えるしかない」 から更にどんな変化が?
目的はもちろん、自分たちの職場である商工会を開け続けるということですよね。感染症の方が出てしまったら職場をどのように維持していくかを一生懸命考えました。考えた内容を内規として計画を作成したのですが、時間の経過と共に繰り返し改訂していくたびに危機意識がどんどん高まって…。
感染症に限らず地震や津波など、非常時にどうやって生き延びるかと真剣に考えるようになったのです。商工会という自分たちの職場を維持することばかり考えたのが最初のきっかけですけど、これって商工会の会員企業である中小企業・小規模事業者にとっても同じく、非常時にどうやって会社を維持していくのかって対策を考えておくことはとても大事なことだと思うようになって、会員企業に広めることを決意したのです。
──どのようなことから始めましたか?
美波町の立地からすると、「南海トラフ地震」の地震、津波のことは無視できません。もしものことが起こったらどのような業種が必要とされるか?という観点、あるいは経営者が若い会社、後継者がいる会社など、復興をイメージしながら策定を呼びかけていくことにしました。業種としては土木事業者、廃棄物処理業者、ガソリンスタンドなどが第一に必要で、車修理も必要となるでしょうから自動車整備業も。避難、緊急搬送、物資輸送などからすると真っ先にがれき撤去、道路開通が必要なことですよね。
そこで、まずは「建設業」でやってみようと考えたとき、商工会の会長が建設業を営まれているので、「ちょうど良い」と(笑)。会長に相談してみたところ、「事業継続力強化計画の認定ロゴマークを使いたい」とおっしゃって、気持ちが一致しました!初めての計画策定支援でしたけど、いろいろと調べながら問題なく策定することができました。
続いて2件目、今度は避難や物資輸送に必要な物は「クルマ」ですよね。地震の影響を受けて故障した緊急車両を直すことも必要かもしれない、と思って自動車整備業を想像したときに、これまたちょうど、副会長が自動車整備業をされていたのです(笑)。

「みんなで生き延びる」ための計画づくりを進めていきたい。
──順調なスタート、次に考えたことは?
同様に業種で考えると、次は「ガソリンスタンド」、そして「食」でしょう。いざという時のことを想像しながら順番に各業種の計画作りを呼びかけて、それぞれの経営者とともに考えながら計画策定を進めていきました。
さて、美波町商工会はJR牟岐線・日和佐駅前の「道の駅 日和佐」の一角にあるのですが、このあたりは津波が3から4メートル襲ってくるといわれています。周辺にある飲食店は津波に襲われる可能性があるのですが、いざという時に事業を継続するため、高台にある飲食店と連携協定を結び、津波が到来した時は高台の連携先で臨時営業をさせてもらえるような協定を結んで事業継続させようと、連携型の事業継続力強化計画を策定しているところです。声掛けした皆さん、目的をよく理解してくれて、計画作りは順調です。
──いろいろと考えることはあると思いますが、最初に考えることは?
もちろん、第一は「命を守ること」でしょう。生き続けないと何もできないわけですしね。また、ヒト、モノ、カネ、情報と守るべき事項が4つに分類されることが多いですが、特に小さな企業にとっては「情報」が最も頭を悩ませる事でしょうね。保有している情報を維持することも必要ですし、緊急時に情報を得るということも重要ですよね。
──これからの支援に係る方向性は?
美波町の中だけで考えるよりは、もっと広域で助けあう連携型の案件を作っていきたいですね。美波町内で連携型を作るよりも距離の離れた企業同士を結びつける、たとえば県内西部や県外に位置する企業と連携した方が、いざという時に助け合えると思います。商工会も青年部や女性部があって皆さん、とてもやる気がありますよね。こんな中から連携体が作れたら良いと思います。いろんな連携ができれば点から面へつながって強い地域になります。また、連携型を作ってから単独型を作ろうとする動きもありますよ。
どんな形にしろ、計画を作られた方は文書化することでいろいろと整理ができ、行うべきことが明確化されたことで非常に喜んでいます。ガソリンスタンドの計画でも事業継続力強化計画には出てきませんが、地域の消防と打ち合わせを行ってから計画を作っていますし、消防も地域の企業がどんなことを考えているのかを知ることで緊急時対応に役立てることができます。
商工会としても、これまでとは違った内容の打ち合わせですから、いつもとは違う一面を見ることができて、これは普段の経営支援に有効だと思うこともあります。事業継続力強化計画という書類を作ることが目的ではなく、これを一つのきっかけとして、緊急時対応と平時のこと両面について考えていきたいと思います。
(2024年3月27日掲載)
〒779-2305 徳島県海部郡美波町奥河内字寺前493番地6 道の駅日和佐2階
(ご参考)認定ロゴマークについて

「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」の認定を受けた場合、もしくは本制度の周知等にご協力いただける機関において、使用することが可能です。ダウンロードや使用規約等は下記ホームページをご参照下さい。
事業継続力強化計画(経済産業省中小企業庁ウェブページ)