四国経済産業局

インタビュー

「事業継続力強化計画」 策定への道しるべ!
顔写真

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
高松支店長 森 猛 様

損害保険会社と事業継続力強化計画について

事業継続力強化計画の策定に関して、会社単独で策定されているケースは少ないと思います。いろんな支援機関が計画策定に向けたアドバイスをされていると思いますが、損害保険会社様はお客様に伴走する姿勢で事業継続力強化計画の策定支援にあたられています。中小企業・小規模事業者の想いに応え続ける損害保険会社を代表して、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 高松支店長 森 猛 様にお話を伺ってきました。

保険をご契約いただくことが第一目的ではありません!

──まずは保険の役割を教えてください。

皆さま、保険会社様や代理店様から話を聞くとなると「保険を販売に来る」と身構えられていませんか(笑)。こうおっしゃる方は今も多いかもしれませんが、私たちはお客様の建物や売上高など一つの資産・状況を見つつ保険をご契約いただいて終わり、ということではありません。少し詳しくお話するならば、お客様のことを深く理解することなく表面的な条件で保険をご契約頂いた場合、本来必要な補償を満たしていないかもしれません。そうなると、自然災害が発生した時に求められる保険の役割を果たすことができない可能性があります。これは、皆さま望んでいないことだと思います。

ですから、私たちは保険商品をご契約頂くことが第一目的ではなく、まずはお客様におけるリスクを低減する方法を一緒に考え、対処していただくような伴走を基本とし、その延長線上として、どうしても低減することができないリスクに対して保険をご活用いただくという考え方が最も望ましい形だと思います。

──少し具体的に支援内容をお教えいただけませんか。

一概に「リスク」と言っても簡単に判断できるものではなく、様々な条件を重ね合わせた結果としてリスクを考えることが重要です。「様々な条件」というところが重要で、お客様から私ども保険会社に対して十分な情報や条件などを教えて頂ければ、しっかりと分析・検証することができますが、そうではない場合は、もしかしたらお客様のニーズを満たしていない可能性があります。そうすると万が一の場合に、お客様にとっても私ども保険会社にとっても望まない結果となってしまうかもしれません。繰り返しになりますが、保険商品をご契約頂くことが第一目的ではなく、お客様にとっていかにリスクを低くするか、そのための必要情報をお伝えすると共に一緒に考え改善に取り組み、どうしても低減できないリスクがあれば、リスクの程度に応じて保険商品をご活用いただくというスタンスで取り組んでいます。いわば、共存共栄の関係であり、お客様が存続されてこその保険事業だと思います。

──事業継続力強化計画の策定支援をされる理由は?

たとえば、火災保険商品にある建物や什器・備品等モノへの保険についてはしっかり加入されている事業者様が多いのですが、修理期間中に必要となる資金繰り(営業継続費用、休業補償費用)をカバーする保険に関しては利用率は高くありません。資金繰りの観点で社内の状況を俯瞰してみていただくと、本当に必要な資金額が見えてきますし、資金不足に懸念がある場合は、それに応じた保険をご活用頂くと良いと思います。そういったことを考える材料として事業継続力強化計画の策定は最適なのではないでしょうか。事業継続力強化計画で検討する「人、モノ、カネ、情報」という4つのキーワードはとても重要で、まさに会社の存続に必要な重要項目と言えます。会社経営者の方々は平時、金融機関目線で資金繰りを考えられておられることが多いと思います。資金繰りに行き詰まれば会社として成り立たないわけですが、それと同様に緊急時における「人、モノ、カネ、情報」 はどれも重要で、人(従業員)に何かあれば製造できない、モノ(製造装置)に何か問題があれば商品を送り出すことができなくなる、というように会社の存続に直結します。

損害保険会社の役割としては、万が一に備えて頂くことと言えますが、現状のもとで自然災害が発生したときにはどのような被害が想定されるのか、人(従業員)への影響、モノ(製造装置や建屋)への影響、カネ(操業)がストップし資金繰りが苦しくなることを見越して一時的な所要資金はどのくらいか、情報(保有情報)が失われた場合にどのような影響があるのか、ということをお客様と一緒に整理・分析し、ご理解いただいた上で必要な対策・対応をとって頂くことが重要で、事業継続力強化計画の策定はその「考えるきっかけ」だと言えます。まずは一緒にハザードマップを確認していただいて、その場所にどんなリスクがあるのかを認識いただきたいですし、ハザードマップを見て初めてここは浸水の可能性があるところだったと気がつくこともあります。そのうえで機器を1階から2階に上げるという行動を取るだけで、事業復旧のスピードは格段に上がることもあります。事業継続力強化計画の策定「様々な条件」を考えた結果として、必要に応じて保険にご活用いただくことも方法だろうと思います。

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社様「製造業のリスクマップ」パンフレット
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社様
「製造業のリスクマップ」パンフレット

リスクを把握した上で保険にご加入ください

──しっかり対策・対応した上で保険を活用するということですね

はい、そのとおりです。しっかり対策・対応するということは会社の状況を深く理解されているということだと思いますし、そのうえで必要に応じて保険をご活用いただくということですから、お客様にとっても納得できる結果だと思います。もしかしたら必要以上の保険契約になっていることがあるかもしれません。また、事業継続力強化計画を策定されたあとも時間の経過と共に各種条件が変わっていきますよね。従業員が増えたり、製造ラインが増えたり、ハザードマップも更新されたりなど。条件が変われば事業継続力強化計画の見直しも必要です。最初にしっかり考え対処することができたのなら、計画見直しの時にも十分力を発揮することができるでしょうし、リスクを把握した上で保険にご加入いただいていたのなら、状況変化があったとしても臨機応変に保険契約を見直すことも可能です。

──お客様と共に保険会社があるということを認識できました

保険の役割は、万が一のために、そして少しでも早く復旧して元に戻ってもらうことが最大の目的であり、私どもの願いです。保険会社各社は今後もリスク低減に向けたご支援・伴走をさせていただきます。お客様におかれましても継続した計画の見直しと対策・対応をぜひともお願いしたいと思います。
(2024年3月27日掲載)

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産業部 産業振興課