インタビュー


株式会社商工組合中央金庫
高松支店長 川上 健太郎 様
株式会社商工組合中央金庫(略称:商工中金)のご紹介
昭和初期、度重なる恐慌により、多くの中小企業が危機的状況に陥る中、その救済を目的として中小企業からの熱望により誕生したのが「商工中金」です。1936年、同業者組合を通じた各企業への資金供給を行う金融機関として、政府と組合の共同出資によって設立されました。設立から80年以上たった現在でも、中小企業専門の金融機関として、公共性・全国ネットワークといった特色を活かしつつ、中小企業組合や組合員に対して多様な支援をされています。
「中小企業による中小企業のための金融機関です」
──商工中金の取り組み概要を教えて下さい
商工中金グループでは、公共性や全国ネットワークを有しているという特色を活かし、組合支援機関である中小企業団体中央会や独立行政法人中小企業基盤整備機構など組合支援機関と連携しつつ、多様な課題解決方法をご提供しています。組合の様々なステージにおいて資金調達を幅広くサポートすること、販路拡大や仕入れルートの拡充、事業承継など多様な課題に対応しています。そのような中の一つとして事業継続力強化計画、BCP(事業継続計画)の策定に向けたサポートも行っていまして、これらの策定は緊急時の対応力向上はもちろん、自社の経営状況の把握にもつながりますから、是非取り組みを検討して頂きたいですね。
──事業継続力強化計画やBCPの策定に向けて、具体的にはどのような支援をされていますか?
全国各地において、中小企業団体中央会や独立行政法人中小企業基盤整備機構など組合支援機関と連携してセミナーを開催しています。災害や感染症に対するBCPの重要性や策定方法などを学ぶことを目的としており、一部の参加者は重要性を理解されて計画策定へと進まれています。計画策定についても、組合支援機関とともに伴走させて頂いております。
──事業継続力強化計画やBCPを策定されることで大切なことは?
計画を策定して頂くにあたっては、自社の経営状況を改めて見つめ直して頂くことが重要です。そこで得た情報をもとに事前対策を検討、続いて計画を策定することになるわけですが、場合によっては資金的な課題も出てくるかもしれません。商工中金としましては金融機関としての強みを発揮できる場面と思っていまして、組合あるいは組合員である企業としての資金的課題を解決できるよう、ともに取り組んで行きたいと考えております。また、一部の組合や企業との間で「災害対応型コミットメントライン」を締結させていただき、緊急時にも金融面でしっかり対応できる体制を構築させて頂いているところです。いずれも、組織として十分検討した上でBCPを策定され、私共も策定を通じた定期的な対話の中で資金ニーズがあるものと判断された案件です。BCPは全ての企業で策定していただきたい事項ですが、全てのリスクを網羅して対策を取ることは不可能です。そのため、「相互扶助の精神」でお互いが補完し合うことは非常に有効であり、組合との親和性が高いのではないかと思います。このような取り組みが広がることにより、「個社の課題解決」が広がって「面的な課題解決」となり、そして最終的には「地域の課題解決」へと連鎖していくことが重要だと思っています。
「コミットメントライン」
コミットメントラインとは、企業と金融機関があらかじめ設定した期間・融資枠の範囲内で、企業が随時借入を可能とする契約です。一般的なコミットメントラインでは、震災等の大規模災害時には金融機関の貸付不能事由とされているため、企業にとって大規模災害発生直後の資金確保に困難が生じる可能性があります。一方、災害対応型コミットメントラインは、一定規模以上の震災等について金融機関の貸付不能事由から除外した契約となっているため、震災等の異常事態発生時も含めて、融資枠の範囲内であれば、あらかじめ定められた条件に基づき迅速な資金調達が可能となります。
地域を挙げて防災と事業継続を
──事業継続力強化計画を策定するメリットは?
メリットはたくさんあると思います。まず、計画を策定する過程において災害時の対策を整理することができます。重要業務の見直しや社内レイアウト・導線の見直しも出てくるでしょうし、会社内外の経営資源を把握することもできます。そのうえで事業継続力強化計画の認定を受けたら、金融支援や税制優遇措置を受けることも可能です。また、組合や複数事業者で策定する「連携型事業継続力強化計画」については、参加した全ての事業者・組合員が各種優遇措置を受けられます。メリットの一例を申し上げると、信用保証での優遇措置、日本政策金融公庫での低利融資、税制については計画に従って取得した一定の設備に対する特別償却が適用されるなど、各種優遇措置が用意されていますし、「ものづくり補助金」での加点措置もあります。緊急時はもとより、平時における経営環境の「棚卸と改善効果」というメリットが何よりも大きいと思います。
──商工中金様として今後の目標は?
商工中金は中小企業組合や組合員に対して多様な支援をさせていただいております。中小企業組合と組合員のニーズをしっかり面的に把握してサポートすることが重要ですから、近い立場の機関である「中小企業団体中央会」や「独立行政法人中小企業基盤整備機構」などと連携しながら進めていくことが重要だと考えています。また、先にお話しした「災害対応型コミットメントライン」についても、他地域では私共に加えて地域金融機関も加わる「シンジケートローン形式」により案件組成されている事例もありますから、地域を挙げて防災と事業継続を考え対処していくことが重要だろうと考えています。商工中金高松支店としましては、香川県内に所在する公的機関や地域金融機関とも連携して、先進的な取組事例を作りたいですし、その事例が他のお手本となって組合内や地域に広がっていき、防災意識の高い、事業継続力の高い香川県へと成長されるお手伝いをさせていただきたいと考えていますので、これからも関係機関の皆さまには連携をお願いしたいと思います。
(2024年3月27日掲載)