四国経済産業局

インタビュー

「事業継続力強化計画」 策定への道しるべ!
顔写真
左 天野社長、右 村上社長

有限会社天野鉄工所 代表取締役 天野 敬三 様
株会社社村上鐵工所 代表取締役 村上 典義 様

【ポイント1】 「連携型」事業継続力強化計画を策定されている
【ポイント2】 違う県に所在している同業者同士の連携
【ポイント3】 平時から強く結びついて、お互い必要な存在に

会社のご紹介

今回は、徳島県徳島市の有限会社天野鉄工所様、そして香川県観音寺市の株式会社村上鐵工所様の連携についてご紹介したいと思います。両社は、同じ業種に所属している企業様同士、しかも隣り合う県に所在していますので、平時は競争関係にあるように見えるところですが、両社はとても緊密に連携されていて、それぞれが助け合う関係にまで発展しているようです。どのような経緯で連携が始まり、そして平時の連携はもちろんのこと、緊急時には「連携型事業継続力強化計画」に基づいて助け合える関係にまで発展したのか、両社の代表取締役と奥様の4人にお話を聞いてきました。

運命的な出会いから10年

──同業者様同士、とても仲が良い関係とお聞きしていますが、どのようなことがきっかけで?

天野社長 今から10年ほど前の話になりますけど、機械メーカーさんが主催した海外旅行にたまたま両社が参加していたんですね。夜の懇親会が開催されたのですが、四国から参加された方が同じテーブルになって、香川と徳島の企業同士ということでいろいろと話をしていたのです。

村上社長 設備の話をするなかで、天野様が大型門型5面加工機をたくさんお持ちだという話になり、私からしてみれば「本当に?」という話になったのです。とても高価な設備で設置場所も必要なので、導入するのは本当に大変なのですが、それでもたくさんの台数をお持ちだと聞いて驚いたんです。私も大型門型5面加工機を持っていたのですが、注文処理が追いついていなかったこともあって製造委託できるかもしれないと思って、是非天野様の設備を見せてもらいたいということになったのです。旅行から帰って2週間後には天野鉄工所様を訪れていました。

天野社長 実は、もうちょっと詳しくお話しすると(笑)、旅行の懇親会で同じテーブルっていうと、お付き合い程度の話になることが普通ですよね。でも、この旅行でハプニングが起こりまして。帰りの飛行機がキャンセルになって、何日経っても帰れなかったのです。その間、お互い助け合ううちに気心知れた関係になれたというのが本当のところです(笑)。帰って妻に「村上様にお世話になった、御礼に行かなければ!」と。

──いろいろとあって、運命のような関係から始まったわけですが、その後はどんな関係ですか?

天野社長 それ以後、毎年一緒に旅行へ行く関係になっています。仕事の付き合いだけでなく個人的な付き合いにまで発展していますね。もちろん、楽しいだけでなく、旅行中に仕事上の悩みを相談しています。楽しいだけでは長続きしない、両社とも同じような環境にいるわけですから。お互い持っている機械設備も似ていて、特殊な機械ですから、他に相談することも難しいです。だからこそ、相談しあえる関係としてお互いを必要としています。また、仕事では助けあう関係で、どちらかで製造が間に合わない、急ぐ時は製造協力をお願いすることもよくありますし、一方でしか作れない場合もあって共に連携しています。これは奥様同士の話し合いで決まったりします(笑)。

村上社長 香川と徳島、隣同士なのですが、それぞれ市場環境は違っていて、両社の取引領域が異なっているからこそ、このような関係・連携ができると思います。我々はいわば「職人」であって、営業が二の次になることもよくあります。お互い苦労が多い立場、扱う金額も大きくなってきていますが、悩みを聞いてもらいながら考え、ある程度のところで「やろうか」と決めることも多いです。製造するものも時代と共に変わってきています。だからこそ、このような関係の中で相談し合える環境は必要です。

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今の関係が息子の代まで続いて欲しい

──社長ご夫婦以外に両社の繋がりはどうですか?

天野社長 同業他社だからこそ、見れば分かることも多くて、製造現場を見ればすぐに分かる・気がつくことも多いですし、技術的なことも共有してもらえる関係になっています。仕事が少ないときには融通し合うこともしてきました。

村上社長 従業員同士も先方の現場に入らせてもらって、参考になることがあれば積極的に持ち帰って取り入れていますし、新しい機械設備が入ったときには見せてもらっています。また、従業員同士が相談しあって課題を解決することもよくありますね。お互い似ているようで違っているし、加工の仕方一つとっても違うこともあります。良い意味で刺激し合っている関係ですね。

──強い関係の中で「連携型事業継続力強化計画」を策定されたことが理解できました

天野社長 それぞれで単独型の事業継続力強化計画を作っていました。天野鉄工所様は徳島県中小企業団体中央会が開いたセミナーで丁寧に教えて頂きながら作ったのが最初のことです。その後、両社の関係がより緊密になる中で徳島県中小企業団体中央会の関係者である中小企業診断士の先生に会うことができ、両社の関係を話してみると、「連携型を作ってみませんか?」と提案いただいたのです。先生のご指導もあって、とてもスピーディーに作ることができました。一方が緊急事態に陥ったとしても、他方がそれをカバーすることはできると思っています。

──これからのこと、将来どのような関係になりたいですか

村上社長 約10年前に運命的な出会いから始まった両者関係です。お互いニッチな分野で事業展開していますから、これからも共に相談し助け合える関係を維持していきたいですし、平時はもちろんのこと、緊急時には両社ともに連携しながら会社を維持していきたいと考えています。お互いのことはある程度理解している関係、経営者だけでなく従業員も同様です。いざという時には相手の状況が手に取るように分かるし何をすれば有効なのかもすぐに分かる。両社とも世代交代が近づいているわけですが、息子の代になっても両社がともに助け合い、ともに切磋琢磨して共に成長できると嬉しいです。
(2024年9月9日掲載)

有限会社天野鉄工所

〒770-0873 徳島県徳島市東沖洲二丁目26-5   

株式会社村上鐵工所

〒769-1611 香川県観音寺市大野原町大野原2839番地   


インタビューを終えて

両社は「連携型」の事業継続力強化計画を策定されています。いざという時、双方が連携して事業を止めない、会社を継続していくための計画ですが、何よりも大事な平時からの連携がとてもよくできていて素晴らしいと感じました。社長ご夫婦の連携はもちろんのこと、従業員同士の連携によりお互いの顔が見える関係になっていますから、緊急時に応援派遣したとしても、ともに「あうん」の呼吸で有事を乗り越えられると思います。インタビューに応じて頂いた社長ご夫婦を見ていますと、同じ会社の一員、あるいは4人兄弟のように錯覚するほど心温まる関係でした。

担当課

産業部 産業振興課