四国経済産業局

インタビュー

「事業継続力強化計画」 策定への道しるべ!

環境問題をジブンゴトに

株式会社wead 代表取締役 井川 桃花 氏

NEXTスタートアップえひめ 表彰式の様子
四国中央市で持続可能な畜産と農業の創造に取り組む四国ケージ株式会社を家業とし、家業での経験を活かしながら、自身でも株式会社weadを立ち上げた井川桃花さんに、アトツギとしての想いや経営資源の引継ぎについての考え方など、お話を伺いました。

──株式会社wead設立までの経緯を教えてください。

オーストラリアのタスマニア大学を卒業後、家業である四国ケージ株式会社に入社し、コーヒー粕に関する研究を愛媛大学と共同研究してきました。そこで、「畜産業」「農業」「コーヒー産業」といった様々な産業で、例外なく多くの廃棄物が排出され、それらが使われることなく燃やされたり、埋められたりしている実態を知りました。そこで、この廃棄物を活用し、ユーザーや社会が求める商品を創りたいという想いで、株式会社weadを設立しました。

──どのような取組みをされていますか。

当社が進めるプロジェクトは、大きく2つあります。

1つ目は、畜産資材、敷料や飼料原料の開発です。敷料は、簡単に言うと畜産動物のベッドです。原材料にはサトウキビの絞り粕である「バガス」や、果樹やお茶畑の剪定枝、またコーヒー粕を活用し、さらに消臭性能に優れた敷料を開発しています。また、畜産の現場では、温暖化による家畜のストレス増加が問題になっています。畜産の生育に影響するので、対策は打つものの、大きな扇風機を回したり、水を撒いたりなど対症療法になっています。こうした中で、当社で開発している飼料は、免疫を高める作用があり、暑さに強い体づくりができる成分が多く含まれています。

──免疫力を高めることで、鳥インフルエンザ等の病気予防にも繋がりますね。

免疫力の向上に繋げることができれば、世界中で問題になっている家畜等の病気を減らす大きな手助けになります。このように、当社の飼料や敷料を起点に、今まで交わることがなかった畜産業・コーヒー産業・農業が交わり、支え合う、この地方にしかできない持続可能な産業を創造していきたいと考えています。

2つ目のプロジェクトは、紙素材・生分解性素材分解資材「greevy」の開発です。本プロジェクトでは、焼却ゴミ、プラスチックゴミ、温室効果ガス排出に関する社会課題に取り組んでいます。温室効果ガスによる影響やマイクロプラスチックの問題は、世界中で注目されているテーマの一つであり、ゴミを堆肥化していこうという動きは世界中で進んでいますが、先進国でもトップレベルの焼却炉数を誇る日本では、まだあまり堆肥化の取り組みは進んでいません。そこで、当社の「greevy」は、紙素材や生分解性プラスチック素材、有機物をかなりのスピードで分解する独自素材となります。例えば紙コップは簡単に分解できそうに見えますが、表面から水で溶けないようなコーティングが施されており、通常は分解するのに約3か月かかると言われています。また、生分解性プラスチックは、通常、半年から1年は分解するのにかかってしまいます。そうすると、面倒だしコスト的にも燃やしてしまった方が良いという議論にもなるのですが、「greevy」を使うことで、半年から1年かかるものが、たったの「3日」で分解します。紙素材であれば3か月かかるところを「1日」で分解できます。

株式会社wead3

バイオPBSの紙コップ(コップの外側は紙で、内側はプラスチック加工)は、当社の「greevy」を使うと、約12時間で6キロ分解することに成功しました。通常は、同量で3週間ほどかかったという話を聞くので、48倍の速度で分解することができるという結果がでています。また、様々なファストフード店やカフェチェーンでプラスチックストローから紙ストローに変えていますが、こちらも同様に堆肥化が難しく、結局堆肥化せずに燃やしてしまっていることが多いです。その中でもかなり分解しにくい会社の紙ストローであっても、48時間で500本分を綺麗さっぱり分解しました。また、廃棄するレタスを20キロほどいただき、「greevy」と混ぜると3時間後には分解することもわかりました。

──これはすごい。

分解のスピードが格段に上がる「greevy」を使用して、音楽イベントやスポーツイベントで使用された紙コップ・紙ストロー、企業・店舗・ホテル等で廃棄される紙素材や生分解性素材を堆肥化して、農家さんや森林保全等に使ってもらうためのプロジェクトを推進しています。「捨てる」という考え方自体を捨てて、世の中のあらゆる廃棄物を活用して、課題を解決していこうという想いのもと取り組んでいます。

──次に、家業についても触れたいと思います。海外留学後、家業に戻ったきっかけは何だったのでしょうか。

家業である四国ケージは、元々肥料の会社として、私の祖父が設立しました。父は東京で一度勤めていましたが、戻ってきて事業を承継しています。

私は日本に帰ってくるつもりはありませんでしたが、留学先の大学で、環境問題に関するディスカッションをした時に、現地の学生との環境意識の差を痛感したのをきっかけに、環境感度の低い日本から、環境に特化した技術やサービスを発信したいと思うようになりました。ちょうどそのとき、四国ケージでは、環境に配慮して殺虫剤を使わない害虫対策やコーヒー粕を使った鶏糞の臭い対策に取り組んでいました。

──まさに絶好のタイミング。

ただ当初は、四国ケージに戻るというよりも、首都圏を含めた就職活動を行っていて、親からは「好きなところに行ったらええやん」と言われていました。ただ、「自分が面白いと思う仕事を選びなさい。一番ここで働いて面白いと思う仕事をちゃんと考えて、そこに入りなさい」とも言われました。自分にとってやりたい仕事を考えた時に、四国ケージが一番自分のやりたい事に近いと思い、戻ってきました。

──四国ケージには、新入社員として入社されたのでしょうか。

はい。むしろ今でも一番下っ端です。なので、様々な仕事をさせていただいています。

また、合同会社liveRという関連会社にも所属しつつ、官公庁や自治体、大学等との繋がりをつくりながら、四国ケージの取組みを世に広めるために活動しています。

──株式会社weadの設立にあたって、ご家族の反応はいかがでしたか。

当時、四国ケージで関わっている、コーヒー、畜産、農業といった事業だけでなく、様々なところに「廃棄物」の活用余地や関与余地があり、家業である四国ケージの範疇から飛び出る部分が出てきたところで、新たに起業したいという選択肢を考えるようになりました。

家族会議を行い、親からは「自分の力でやってみなさい」という言葉をかけられました。もちろん、四国ケージやliveRの社員の方に手伝ってもらうこともありますが、その場合は業務委託契約等でBtoBとして取引をしています。

──家業の取組や価値を引継ぎつつ、新たな技術を組み合わせた形の創業なのですね。どなたに経営の相談をしていますか。

地方銀行に勤められていた方が経営に参画いただいているので、事業計画や資金調達については、その方と相談しながら進めています。

今年度は、特許庁の「I-OPEN PROJECT」にも選定され、頼りになるパートナーや専門家とのご縁が広がっている状況です。家業の社員の方も、非常に頼りになるので、様々なアドバイスをもらいながら、事業を進めています。

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──今後、国や支援機関等に、どのようなサポートを求めていますか。

ビジネスマッチングをお願いしたいと感じています。今も民間企業と共創プロジェクトの相談が進んでいますが、どうしても四国外の企業との商談機会が少なく、地域内外問わず、あらゆるニーズを持つ企業や自治体等とのマッチングする場が欲しいです。

また、スポーツイベント、映画館、ホテル等の当社の技術が役立てる業界に対しても、誰に相談していけばいいのかと悩む部分があるので、コーディネートしてくれる支援者の方がいらっしゃればと感じています。

──井川さんの事業は、世界全体の課題解決にリーチできる取組で、これから四国内外に広がっていく姿に目が離せませんね。



企業データ

社名 四国ケージ株式会社
ウェブサイト https://www.shikoku-cage.jp/
所在地 愛媛県四国中央市土居町野田1548
設立 1967年7月
代表者 井川 茂樹氏
事業内容 畜産機械器具の製造・販売・施工・メンテナンス
社名 株式会社wead
ウェブサイト https://www.wead-inc.com/
所在地 愛媛県松山市久米窪田町337-1
テクノプラザ愛媛本館内
設立 2023年8月
代表者 井川 桃花氏
事業内容 研究開発・製造・コンサルティング
  

令和6年6月12日掲載 ※掲載の内容は、令和6年6月12日時点のものです。

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