四国経済産業局

インタビュー

「事業継続力強化計画」 策定への道しるべ!

人とロボットが共に楽に楽しく働ける建設現場へ

建ロボテック株式会社 代表取締役
有限会社都島興業 代表取締役
眞部 達也 氏

眞部 達也 氏の顔写真
建ロボテック株式会社の代表取締役であり、家業である有限会社都島興業の代表取締役も務める眞部達也さんに、建ロボテック設立の想いや、アトツギベンチャーとしての成長、今後目指す将来像について、お話を伺いました。

──家業にはどのような経緯で入られたのでしょうか。

元々は料理人の道を目指していましたが、卒業後に挫折し、父が創業した会社に22歳で入社しました。そこから10年間社員としての経験を積み、2008年に取締役専務、2016年に代表取締役社長となりました。

──当初は全く別の道を目指していたのですね。家業の仕事はどうでしたか。

鉄筋職人は、身体を酷使するし、冬はものすごく寒くて、できるだけ楽をするためにどう生産性を上げるかなどを考えていました。会社の経営状況が悪化したタイミングで、経営に参画することとなったのですが、経理・財務、営業など、右も左もわからない状況でした。そんな中、誰よりも早く出勤し、現場作業をこなし、夜は別の建設業の社長の鞄持ちを通じて、営業を学びました。

──家業でのご経験が、建ロボテックの設立に繋がったのでしょうか。

きっかけは若い職人が辞めていくことでした。建設業界は「3K」、「きつい」「きたない」「危険」な仕事と言われます。現場では、皆、その日に課せられる目標に向けて、取り組んでいます。一方で、体力がない若手や、40代以上の体力のピークを過ぎた人間が足を引っ張ってしまうこともよく見られます。年齢を重ねると、どうしても全盛期に比べ生産性が低下してしまい、立場が厳しくなってしまう環境に違和感を覚え、これをどうにかするのが自分の仕事だと考えるようになりました。

そこで、家業の経営をしながら、「建設現場の無駄を研究し、省力化製品の開発を進めること」を目的に、2013年にEMO株式会社(現・建ロボテック株式会社)を設立しました。当時は、省力化資材に取り組んでいましたが、それでは根本的な解決にならないと考え、「人とロボットが共に楽に楽しく働ける建設現場」を目指し、2016年に、ロボットベンチャーとして、建設用ロボットの開発に着手しました。

その後、現場の作業において、生産性向上の余地を探っていった際にたどり着いたのが、足場の鉄筋結束作業でした。鉄筋結束作業は、田植えをするような姿勢で、天候や季節に関係なく行うため、体力的にも精神的にも辛い単純作業になります。そうした作業から職人を解放し、より技術力が必要な作業に注力できるようにすることが必要だと考えました。

建ロボテック株式会社の写真

──建設現場では長年当たり前とされた課題に対し、新たな視点が入ることで解決に繋がったのですね。

建設業界には慢性的な人手不足という問題もあります。特に若者の割合が少なく、労働条件を理由に離職率が高くなっています。2024年には建設業界でも適用される週休2日制により生産時間が減少することから、いかに生産性を向上させるかということが業界で注目されています。

──ロボットの開発は、どのように進められたのでしょうか。

最初のうちは、誰に相談したらよいかもわからず、ファクトリーオートメーションの会社に企画書を持ち込むものの、「考え自体は面白いが、商売になるかわからない」という声も多く、断られ続けてきました。その中で、電機メーカーのOBの方からの紹介で、協力会社を見つけることができました。そして、2019年に「世界一ひとにやさしい現場を創る」をミッションに、建ロボテック株式会社へ社名を変更し、翌年2020年には鉄筋結束ロボットが完成し、省力化ロボットブランドであるトモロボの販売も開始しました。

──トモロボを開発し、スケールを進めていく際のご苦労はありましたか。

「結束」を行う機構の開発は、非常に困難でコスト・時間が必要な部分です。しかし、世の中にはそれを可能にした優秀な電動工具が存在します。当社では、新しい発想として、人の代わりに電動工具を活用し、作業を行うロボットを開発しました。それにより、労働対価の低い建設市場にフィットした低価格のプロダクト開発に成功しました。

建設生産は、使われる部材も多品種で大量なため、人の手による精密施工は不可能です。よって、大きな精度誤差に対応する独自走行機構を開発しました。また、耐久性が高く、現場での労災事故防止のための触覚となる安全センサー等も独自に開発しています。全てにおいて、安価であり堅牢であり確実性を持った新開発です。

一方で、トモロボを鉄筋の上で安定して走らせることが、課題の1つでした。克服策としてトモロボの重心バランスに着目しました。当初は鉄筋2列を使って進む4輪車でしたが、3列6輪にすれば、「やじろべえ」のようにバランスが取れるのではと発想を変え、鉄筋のたゆみや誤差に合わせて、柔軟に動けるようにしました。

デザインは、共に働く相棒としてロボットとの間に信頼を築けるデザインを目標としました。元香川大学創造工学部の井藤先生と共同でのデザインになります。また、白と赤のカラーは、純白の信頼感と血の通ったパッションの表現であり、海外進出も考え、日本製品だと一目でわかるよう日本国旗のカラーも表現しています。

建ロボテック株式会社の写真

──現在は、どのように開発を進められていますか。

トモロボの開発については、2021年度までは協力会社と設計・開発を進めてきましたが、初号機の開発を終え、協力会社が産業機器開発の事業を縮小することになってしまいました。そこで、メーカーが保有する知的財産権等を買い取ることとし、メーカー側の開発メンバーが当社に加わってくれたので、現在では自社開発を進められるようになっています。

──製品を展開する中で、お感じになられていることはありますか。

建設業全体で変わっていくことが重要であり、川上のゼネコンや建設業者が同じ想いを持って、建設業の職人の労働環境や価値の向上に取り組む必要があると思っています。新たな技術を持ち、生産性を向上できるロボットがあっても、受け入れる器がなければ、何も変わらないのです。ジグゾーパズルを思い浮かべるとわかりやすいと思いますが、パズルをはめ込む際に、受け入れ側の形が新たな技術やソリューションを受け入れる形になっているかが大事になってきます。とはいえ、天動説と地動説のように、元々信じている考え方を転換することは一筋縄ではいかないのです。

──トモロボのような革新的なサービスを普及していくためには、受け入れ側の考え方や体制も重要になってくるのですね。

建ロボテックでは、トモロボだけでなく、建設業者や職人が楽になっていくことを求めているので、ただ製品を導入してもらうというよりも、実際に使う方々のことを考えて、泥臭く取り組んでいかなければならないと考えています。

トモロボの使い方のレクチャーを仕組み化し、安心して利用するための使い方研修を提供しています。また、故障時の修理費用を補填する保険商品も開発し、できる限り現場に寄り添ったサービスを提供しています。

建ロボテック株式会社の写真

──実際に導入した企業では、どの程度の合理化が図れたのでしょうか。

結束作業全体の35パーセント程度が省力化できるので、単純作業にかかる時間を軽減し、職人はより高度な分野に注力できるようになりました。

──家業の経営をしながら、ロボット開発にも取り組むのは本当に大変だったと思います。また、経営も一から学ばれる中で、指導を受けた方はいらっしゃるのでしょうか。

経営に関しては、佐々木 繁範氏に月1回指導を受け、ぶれない一本軸をつくれたと思っています。人である以上、社会に役に立つために何ができるかを考えていこうと思い、特に実力不足を痛感したときに、要素として、「経験・知識がないか」「考える力がないのか」「考えるロジックがないのか」という点があることに気づき、そこから考えることが楽しくなってきたことを覚えています。

──海外進出にも取り組まれていますが、どのような展開をお考えですか。

人手に困っている国には提供していきたいと考えていますが、人手が足りているのに自社のロボットが導入され、人が解雇される等の悪影響が予見できる国に対しては、提供するつもりはありません。

──最後に、今後の展望についてお聞かせください。

建設業の「人不足」や「労働者の健康被害」の問題は、日本だけではなく世界中の問題となっています。様々な問題を解決に導く、よりたくさんのソリューションを、いち早く建ロボテックから届けたいと考えています。また、建設業には26専門工事業種が存在しますが、当社はまだ「鉄筋工事」という1専門業種にしか提供できておりません。その他の専門業種でも生産性向上のソリューションに向けて、スピード感を持って向き合っていきます。

さらに、建ロボテックの大きな目標として、「メタコンストラクション」の実現があります。これは今まで建設現場で働けなかった方々や在宅でしか働けない方々が、リモートで建設ロボットの操作や判断を行い、建設現場で働くことができるようになるというものです。これを実現するために、リモートで働けるように土壌整備と、遠隔で操作してもらう機器やロボットのラインナップの拡充を図っていきたいと思います。

──建設業は、後継者不在率の高い業種となっています。建設用ロボットの高度化により、後継者や社員がより楽に、楽しく取り組める世の中になることを期待したいですね。



企業データ

社名 有限会社都島興業
ウェブサイト http://miyakojima-unit.com/
所在地 香川県木田郡三木町大字井戸1577-1
設立 1988年4月
代表者 眞部 達也氏
事業内容 鉄筋工事一式・土工事、建築資材販売、特殊構造物企画・施工、鉄筋ユニット製造販売、鉄筋工事ユニット化企画・設計・製造・販売
社名 建ロボテック株式会社
ウェブサイト https://kenrobo-tech.com/
所在地 香川県木田郡三木町大字上高岡246番地2
設立 2013年7月
代表者 眞部 達也氏
事業内容 建設現場に特化した省力・省人化ロボットソリューションの開発・提供、スマート施工コンサルティング、RXコンサルティング、労働環境改善資材の開発・販売、受託開発(新規・改造開発)、開発コンサルティング
     
令和6年6月12日掲載 ※掲載内容は、令和6年6月12日時点のものです。

担当課

地域経済部 新事業推進課
産業部 中小企業課