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インタビュー

地域内外の交流と挑戦が生まれる街へ
琴平バス株式会社 代表取締役
株式会社コトバス・コミュニケーションズ 代表取締役
楠木 泰二朗 氏

──琴平バスの設立経緯について、お聞かせください。
祖父が戦後、兄弟でトラック運送業を営んでいたのですが、観光地として賑わっていた琴平町において、観光業に携わりたいという想いでお土産店を開業、併せてタクシー事業やバス事業へ展開してきました。そのため、琴平バスの原点は観光にあります。
バス事業がメインになった後、父が旅行部門の責任者をしていたのですが、そこから独立し、新日本ツーリスト株式会社(現在は琴平バスに経営統合)を設立しました。
──家業はどのようなきっかけで継いだのでしょうか。
父が新日本ツーリストの社長であり、親族にも経営者が多かったため、自分も漠然といつかは自ら経営をしたいと思っていました。内定をもらっていた会社もあったのですが、父から「将来、経営者になりたいのであれば、回り道をせずに新日本ツーリストで経営を学んだ方が良いのではないか」と言われ、入社を決めました。それまでは、あまり家庭内で会社の話をすることはなく、特に継いでほしいと言われることもありませんでしたが、後から振り返ると、バブル後の経営状況は多くの苦労もあり、言い出せなかったんだろうなと感じています。
──家業に入られた際は、どういった立ち位置だったのでしょうか。
両親が会社にいましたが、一社員という立ち位置でした。最初は先輩社員と同様に添乗員を務めながら、新規事業としてスタートした四国八十八ヶ所のランドオペレーター事業を担当していました。
──こうしたご経験を経て、新日本ツーリスト、琴平バスの代表に就任されたのですね。
父が琴平バスの経営に参画してからは、既に一部任されていたところはありましたが、2007年に新日本ツーリストの代表、2013年には琴平バスの代表に就任しました。
──社長交代のタイミングは、決めていたのですか?
いつかは自ら経営トップを務めたいという意欲は持っていましたが、タイミングについては父の意向でした。「ビジネス・経営は一斉にスタートしなければならない陸上競技とは違う。人より早く走り出した方が有利」という考えを持たれていて、なるべく早くバトンを渡す事を考えていたようです。
──経営や経理は、どのように学んでいったのでしょうか。
2005年から、叔父が経営する会社からの出資を受け、「株式会社高速バスドットコム」という会社を東京で立ち上げました。そこで、立上げから経営のイロハの習得まで、経営の勘所についても叔父から教わり、その経験が自身の基礎になっていると感じています。
──現在、経営に関するご相談は、どなたかにされているのでしょうか。
全国の経営者仲間と定期的に会って相談や情報交換をしています。また、叔父とは、定期的に経営の方向性について意見交換をしており、自身の経営を振り返る良い機会になっています。
──琴平バスの経営に取り組みながらも、社員にチャレンジを促しているような印象を受けます。
この分野であれば誰にも負けないという事業を地域で作っていこうと考えています。初めて担当した、四国88か所ツアーのランドオペレーターなんて、ものすごくニッチな世界でしたが、ここに取り組める会社は他になかったんですよね。祖父の時代にも、麻雀ができるバスなど、他社が持っていないような尖った取組みをしていました。
──コロナ禍に直面した際には、オンラインツアーを企画され、現在では、VTuberによるツアーなども企画していますね。
これらのアイデアは、社員から自発的に出てきています。ボトムアップ型で、色々な人がアイデアを出し合って、新たな取組みが生まれる方が組織としては強いと思います。
採用時にもそうした考え方を発信することで、自分の考えを形にしたいと思う人たちがたくさん集まってきます。会社内の意見を集められる仕組みづくりだけでなく、採用からも組織づくりに取り組めていると思います。

──新たに取り組まれるホステル事業については、どのような想いで始められたのでしょうか。
10年以上前からインバウンド誘客に注力しており、主に東アジア各国の旅行会社から貸切バスのご依頼を頂いておりますが、当時から旅行形態は団体旅行から個人旅行にシフトするといわれていました。
外国人個人旅行者との接点を作る事を目的に2017年に「KOTOHIRA TRIP BASE Kotori」という観光案内所を始めたのですが、ゲストとより深い関係性を持てる宿泊業に魅力を感じ、日本ではまだ少ない職住一体型コリビング施設「Kotori Coworking&Hostel」として業態を変え、再スタートしました。この施設をHUBにして、滞在するゲストに向けて、四国の魅力的な体験コンテンツやプログラムを提供していきたいと思っています。
──琴平は、地域全体でチャレンジしているような印象を受けました。
この先数年で、この流れは更に進んでいくと思います。参道沿いのハード改修も、皆がやっているから自分もやろうと取り組む方が増えてきています。若い方が新しくお店を始めると、それに刺激を受けて、周りのお店も新たな取組みに着手しています。こういった中で、前向きな雰囲気ができつつあると感じています。

──交流人口から関係人口に変わっていく流れができつつありますね。
「コワーキング&ホステル」に取り組む理由はいくつかあります。地域的な視点でいうと、観光客や滞在客は、今後もまだまだ増えていくように感じていますが、それを地域が享受していくためには、まだまだプレイヤーが足りない状況です。そのため、受け皿となるプレイヤーを呼び、繋げていくことが非常に大事だと思っています。
観光や地方創生にフルコミットして全部やるのではなく、コロナ以降、副業なども当たり前になってきているので、自分の空いている時間でチャレンジしてみたい、関わってみたいという方と繋がれる場所を作りたいと思っています。
もう一つ、宿をやろうと思ったきっかけがあります。コロナ禍に1週間ほど九州のゲストハウスを転々としていたのですが、そこではフットワークが軽い若者が集い、年齢や立場関係なく、仲良くなれるシーンがあって、非常に面白いと感じました。そこで地域のリピーターを創出する場をつくることができれば、より長い目で琴平と付き合える人を増やすことができ、観光コンテンツや仕組みを作れる方とも連携できる思ったのがきっかけです。
──改めて、事業全体の今後の展望をお聞きかせください。
バス事業などの運輸業は、比較的硬い業界ですが、積極的に新たなチャレンジをしていきたいと考えています。
観光においては、団体旅行から個人旅行に流れが変わっていく中で、関係人口に繋がる取組みを強化していきたいと考えています。特に、我々は元々観光の会社だと思っているので、まずは琴平に来てくれる人を増やし、その中で、他の都市からのダイレクトアクセスを増やしていくように取り組んでいきたいと思っています。
また、今まで取り組んでいなかった地域交通も本格的に手がけていきます。まずは、スマホアプリで簡単に呼べる月額5,000円で乗り放題のサブスクリプション型地域交通「琴平mobi」をスタートしました。まだ採算を取れるには時間がかかると思いますが、地域の財政に頼らない、新たなモデルを作っていきたいです。
──地域への想いがすごく伝わってきました。最後に、地域に関わるモチベーションがあれば、教えてください。
一番のモチベーションは、単純に「やっていて楽しいから」ということですが、我々のような地域企業が永続的な成長を目指す上で、その土台となる持続可能な地域づくりに貢献することは必要不可欠な事だと考えています。
事業を通じた地域貢献をテーマに、現在は世界中のデジタルノマドを琴平に誘致する活動に注力しています。
今後は、琴平で様々な取組みにチャレンジしたいという方を呼んできて、繋がる場を創出していきたいと考えています。興味がある方は是非関わっていただきたいです。

──コロナ禍を乗り越え、運輸と観光の両輪を回す楠木社長は、地域をボトムアップで盛り上げていく、自社を超えた影響力を感じました。
企業データ
社名 | 琴平バス株式会社 |
ウェブサイト | https://www.kotobus.com/ |
所在地 | 香川県仲多度郡琴平町五條1045-1 |
設立 | 1956年9月 |
代表者 | 楠木 泰二朗氏 |
事業内容 | 一般乗合旅客自動車運送事業(高速バス・路線バス)、一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)、旅行業 |
社名 | 株式会社コトバス・コミュニケーションズ |
ウェブサイト | http://miyakojima-unit.com/ |
所在地 | 香川県高松市朝日町5-4-18-1F |
設立 | 1983年8月 |
代表者 | 楠木 泰二朗氏 |
事業内容 | オペレーション業務 |
令和6年6月12日掲載 ※掲載の内容は、令和6年6月12日時点のものです。
担当課
地域経済部 新事業推進課産業部 中小企業課