四国経済産業局

インタビュー

「事業継続力強化計画」 策定への道しるべ!

養殖を世界に羽ばたく成長産業へ

赤坂水産有限会社 取締役
株式会社JABURO 代表取締役
赤坂 竜太郎 氏

株式会社JABURO写真
赤坂水産有限会社の取締役である赤坂竜太郎さんは、2022年、株式会社JABUROを設立されました。赤坂水産有限会社での家業の経営資源を活かしつつ、地域、水産業全体の発展を見据えたアトツギベンチャーとしての新たな取組みについて、お話を伺いました。

──株式会社JABUROの設立経緯を教えてください。

弊社が所在する西予市は、真鯛の生産量全国一愛媛県において、有数のマダイの生産量を誇っています

地域に養殖業者はそれなりにいるものの、他産地と異なり、漁協等を介した繋がりが希薄で、20年以上商売の話をすることはありませんでした。同じ地域の養殖事業者でも、強みが異なり、多数の魚種や活魚運搬車を保有している会社や、養殖での生産量が大きく、少ない人員で合理的に管理する会社がいます。当社では白寿真鯛など、餌を工夫したり、給仕方法の合理化を図ったり、海外販路を想定して数日経過した際に最も美味しくなるように作る方法を検討したりしています。こういった異なる強みを組み合わせて協業を進めることで、次世代の養殖の姿を追い求めており、その中での養殖業者3社と手を組んで設立したのが株式会社JABUROです。

──複数の企業が連携することで、どのような強みがあるのでしょうか。

地域の大きな課題として、若者の流出が続いていることが挙げられます。就職をきっかけに地元に残る方や移住してくれる方を増やすには、収入だけではなく、企業の規模と安定感が大事だと思っています。万が一、どこかがダメになったとしても、複数企業で連携していれば、持続していける安定感を感じてもらえるし、養殖産業に最先端技術を取り入れるような取組みは若者の共感も得やすいのではないかと感じていました。

また、複数企業と手を組むことにより行政との窓口になれたらという考えもありました。その一つとして、水産庁の「水産等養殖業シナジービジネス創出事業」に取り組みました。行政においては、1社に支援するというのは難しく、地域の産業全体を支援するといった形をとることが重要で、それが先進的な取組みであれば、お互いに進めていきやすいのではと思っています。本事業では、事業費3億円ほどになりますが、全国で初めて採択してもらうことができました。

──地域内の連携について、足並みを揃えるのは大変だったかと思いますが、赤坂さんから呼びかけられたのでしょうか。

そうなります。会社によって連携の考え方は様々ですが、コロナ禍を通じて、商社による代理販売第一の考え方に変化が見られました。従来、養殖業は商社を通じて餌を仕入れ、自社で育てた水産物の販売を全て委託しているため、育てるだけで良いという考え方がありました。しかし、コロナの影響により、冠婚葬祭が控えられるようになったとき、一般的な真鯛は従来の販路で売ることが難しくなりました。だからこそ、自社で生産する水産物の価値を求め、BtoB・BtoCともに直販に取り組む赤坂水産の姿勢や、地域の水産物やその販路を開拓し、守っていく想いに共感していただけたのかなと感じています。

──赤坂水産では、海の生態系を守る活動に一早く取り組むなど、JABUROの立上げ前から、養殖の価値を高めるための活動を推進しているのですね。

JABUROの取組みは、それらの活動の延長線にあり、最終的には、日本のマダイ養殖の生産量を増やしたいと思っています。

この50年間で、世界における1人当たりの魚の消費量は約2倍まで増え、それに伴い、養殖の生産量は40年間で約10倍まで増えましたが、日本の養殖業は15パーセント程度減っています。しかし、日本は排他的経済水域と領域の広さは世界6位である上に、魚食文化に関しては未だに世界をリードしており、この環境下で、まだ十分に成果を出せてないように感じています。そのため、水産業は成長産業という観点では捉えにくく、後継者が帰ってこないという事に繋がるのかなと思います。

農業、畜産業でも言えることですが、後継者不足を解決するためには、生産者自体ももっと変わらないといけないし、先進的な取り組みももっと必要だと思っています。

──そういった想いのもと、魚粉ゼロで育てる真鯛「白寿真鯛0(ゼロ)」の開発や、日数が経過しても美味しく食べられる真鯛など、新たな価値の提供を目指しているのですね。

株式会社JABURO写真

日本の生産量が増えないことについて、3つの要因があると思います。

1つは、養殖業であっても、天然資源に依存している点です。真鯛やヒラメは人工種苗と言って、人間が孵化させた卵から稚魚を育てる仕組みができています。他方で、マグロやブリは、漁師さんが沖で取ってきたモジャコと呼ばれる天然種苗に依存しているので、マグロが売れても、いきなり生産量を増やすことはできません。餌についても、ブリやマグロといった肉食性の強い魚種だと、生魚やカタクチイワシを主原料にした魚粉比率の高い飼料で育成する必要があり、カタクチイワシや子魚の収量が落ちているため、餌の高騰により、採算性が合わなくなって漁業から離れてしまうことに繋がってしまいます。

2つ目は、多くの魚種において養殖可能な海域が限定的という点です。例えば、サーモンやホタテは、水温が15度以上になると死んでしまうため、養殖できる海域に限界があり、ほぼ北海道とか東北でしか育てられないことになります。愛媛や香川でも事例はありますが、養殖できるタイミングが限られます。ハマチなどの青物やマグロもすごく人気の魚種なのですが、これらは逆に水温が15度以下になるところでは育てるのが難しくなります。また、近年同じ海域でも水温の変化が著しく、シマアジやヒラメなどは以前に比べ、大幅に生存率が悪化しており、飼うことが大変難しくなってきています。

鯛は、かなり広い海域において、人工種苗で育てられるタイプなので、天然種苗の量に影響されず、魚粉の入っていない餌で育てられれば、変化の激しい日本の海において、さらに生産量を伸ばせる可能性を秘めた唯一の魚種だと思っています。ただ、鯛は海外ではあまり知られておらず、もっと鯛を食べる文化を広める必要があると感じています。つまり、日本の生産量が伸びない要因の3つ目は、生産量を拡大しても売れないという点です。

日本の養殖業を成長産業にするために何が必要かと考えた時、マダイが売れる魚になればよいと気づきました。

──それがマダイのブランド化に繋がるのですね。

私は2019年に鯛をブランド化しましたが、ブランド鯛の中では後発も後発です。それが今では、アメリカ市場で1番か2番のシェアを取っています。魚は、通常「締めたて」の魚の美味しさを求められます。しかし、アメリカのレストランで提供される鯛は、飛行機を使っても、締めてから最短で5日程度は経過しています。だからこそ、私達は締めたての美味しさではなく、日数が経過しても美味しいマダイにこだわっています。

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──まさに、市場の先にあるお客様の顔が見えているからこその取組みですね。

ただ美味しいだけでなく、欧米人の志向に合わせて、魚粉を使っていないマダイを食べることで、水産資源の持続化に繋がることをしっかり発信しています。そのコンセプトを知ると、食へのプロセスを大事にする彼らは「ワンダフルだね」と反応します。

──味づくりについて、どのような取組みをしていますか。

2023年12月にニュースリリースをしましたが、品質を落とさず輸送できるよう、魚の鮮度やうまみの測定手法の確立に向けた「品質規格標準化プロジェクト」を5社連携のコンソーシアムとして立ち上げています。旨味を分析し、数字が見えると、生産者側は、この育て方や締め方をした鯛は、このくらいの数字になったといった答え合わせができるようになります。

──赤坂水産やJABUROでの新たな取組みについて、赤坂水産の社長であるお父様はどのような反応でしたか。

父は自由にやらせてくれています。肯定も否定もせずというか。とりあえずやってみろといった形です。

──進学や就職後に、家業に戻って欲しいといった話はあったのでしょうか。

すぐに戻ってこいという話はなく、前職は別の分野の会社にいましたが、そこの仕事は私じゃなくても就きたい人は山ほどいるし、私より優秀な人もいっぱいいるだろうと。でも、地方の水産業をどうにかしたいという想いをもって、それなりに勉強してきた人は他にいないのではないか、私をより必要とする場所は、地方だと思い、戻ってきました。

──ただ進学や就職後に学んできたことが、IoTを活用した給餌などに繋がっていますよね。

研究機関と連携しなくても、自社で試行錯誤できるので、これまでの経験は、非常に重要だったと思っています。

株式会社JABURO写真

──鯛の販路を広げ、成長産業にしていくという御社の取り組みは、日本全国から一緒に盛り上げたいという声も出てくる気がします。

この地域だけが儲かればいいという話ではなく、私の目的はマダイの生産量を増やすことなので、ウェルカムです。JABUROもそうですが、組織的な展開で鯛を成長産業にするためにはどうしたら良いか、場合によってはM&Aなど企業合併等の手法も必要なのかもしれません。そういった知識やノウハウについて、相談できる相手がいないので、国や行政等からのサポートを期待できるとありがたいです。

──赤坂さんの事業は、日本の水産を押し上げ、海外に日本発の「鯛」を日本の周りに拡げるプロジェクトだと感じました。四国から日本全国に繋がり、海外から愛されるマダイに向けて、活躍を期待しています。



企業データ

社名 赤坂水産有限会社
ウェブサイト https://akasakasuisan.co.jp/
所在地 愛媛県西予市三瓶町周木6番耕地112番地2
設立 1988年4月
代表者 赤坂 喜太男氏
事業内容 真鯛養殖、ヒラメ養殖、魚類の活魚運搬、卸し販売、ちりめんの船びき網漁業
社名 株式会社JABURO
ウェブサイト https://akasakasuisan.co.jp/jaburo/
所在地 愛媛県西予市三瓶町長早4番耕地140番地
設立 2022年11月
代表者 赤坂 竜太郎氏
事業内容 魚介類、水産物の養殖、加工及び販売、水産物の卸し販売、餌料、飼料の販売、養殖のコンサルティング業務、水産用の資材の販売、水産物の輸入及び輸出
  

令和6年6月12日掲載 ※掲載の内容は、令和6年6月12日時点のものです。

担当課

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