株式会社ビッグウィルは、徳島県東みよし町において2007年に創業。木材を世界最薄水準でつき板に加工する技術と、つき板を金属や紙、不織布等、様々な下地に接着する技術で、建築資材はもとより文具や雑貨、インテリア用品など、新しい分野にも利用の幅を広げている。
過疎化、高齢化が進む中山間地域での同社の福祉・環境・雇用を一体化したビジネスモデルは、独自技術の特許権を活用した地域活性化事例としても注目を集めている。
「世界的な環境問題や森林資源保護意識の高まりから『木を伐ってはいけない』とよく言われますが、日本の山林に目を向けると、本当は『適切に木を伐らなければならない』なんですよ。」一見すると木が生い茂り豊かに見える山でも、間伐などで木が適切に管理されずに、荒れている山が多くなっていると近藤社長は日本の山林の現状を語る。
山林を資源として守るためには間伐作業が不可欠である。それならば間伐材に付加価値をつける新しい産業で、山を守り雇用を創出できないかとの思いから地元で起業した。
つき板とは、木に対し突く方向に刃物を入れて木を薄くスライスしたもので、合板の表面に貼り付けたものは建材や家具の部材として、紙等に貼り付けたものは壁紙として利用されている。
同社のつき板加工技術と接着技術で開発した天然木不燃シート「恋樹百景」は、つき板シートとしては不可能とされていた360度の折り曲げを可能とし、また、金属や紙等多くの下地や曲面・凹凸面にも自在に貼れることが特徴。不燃・準不燃規制にも適合しており、防火上の内装制限がかかる場所にも利用できる。
間伐材を有効利用した本物の木の木目と香りで高級感と癒しの空間を作り出し、不燃性能や施工性でビニールクロスに移ってしまっていた壁材市場を少しでも取り戻したいと思い開発した製品であったが、実績がないとなかなか売り上げにはつながらなかった。
まずは「製品と技術を知ってもらわなければ」と考えたのが、折り曲げ自在な「恋樹百景」の特性を生かした木の折り紙。木の折り鶴のインパクトはすさまじく、大きな反響を呼んだ。木に触れる機会が少なくなった今だからこそ、木について考える切っ掛けになってほしいとの思いもあり、熨斗袋やうちわなど「樹の紙プロダクト」としてラインナップ展開した。
また、廃校となる学校の木から作った卒業証書、地元産の木から作った地元スポーツチームの応援グッズ、伝統工芸品とのコラボレーションなど、木と人にまつわるストーリーを大切にした商品展開へと広がっている。
全国各地で木の有効利用に困っている中、同社では、各地の木を送ってもらい、壁紙やグッズに加工して都市や地元で使っていただくという地産外消、地産地消の仕組みを支援しており、現在は46都道府県の木が集まっているという。
同社では作業者として地元の高齢者やハンディキャップを持った人たちも活躍している。就労支援施設と連携し、彼らが働きやすいように好きな時に、好きなだけ自由に仕事をしてもらう。それぞれの多様性を守りながら、人それぞれのペースでつき板シートが生産されている。
創業して13年、認知度や信頼も上がり、日本国内の販路を確立、アメリカ、ヨーロッパでの販売体制も数年かけて構築できた。最近は技術や仕組みを売ってくれという問い合わせもあるが、すべて断っているという。
「地元の若い人達が、IターンやUターンで戻ってきて働いてもらえる場所作り、働く意欲のある高齢者の活躍の場所の確保、ハンディキャップを持った人たちが県外に行けなくても『地元にこの会社があるから生活していける。』そう思ってもらえる企業作りを今後もしていきたい。」近藤社長の強い想いと行動は、年輪のように次の100年の成長につながっている。
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※掲載の内容は、令和3年12月17日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
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