香川県善通寺市で一番高いビルと言えば、松浦産業株式会社。創業以来、テープやロープ等の荷造りひもや紙袋用把手(とって)を中心に誰もが一度は手にしたことがある製品を多く手掛け、90年という長い年月をニッチトップとして駆け抜けてきた。
業界初となるエコマークの取得、生分解素材、バイオマスマーク等、環境に配慮する取組も先行して行う一方で、長く使ってもらうことでプラスチックでも持続可能な社会に貢献できるという「ロングライフデザイン」は、同社だからこそ提案できる注目すべきビジネスモデルである。
同社は品質の良さと縁を大切に繋ぐ営業力でリピート率が高い。市場や嗜好の変化の兆しにアンテナを張り、時代に沿った展開でエンドユーザーの求めるロングセラーを多数生み出している。
例えば「来るなら濃いピンクテープ」は害獣被害から畑を守るための識別テープ。発色が良く色持ちも長いため、ECサイトでの口コミが多く寄せられ、ホームセンターにも市場を拡大した。
紙袋用把手は素材や色のバリエーションが豊富で、全国的にトップクラスのシェア。2018年には「ハッピーサークル」が経済産業局が推奨するクールジャパン事業の採択を受けパリに出展、高級感のあるデザインで世界でも注目を集めた。段ボールに付ける把手「タックハンドル」は、シールの部分の強度がポイントで、特許技術が詰まっている。ビールや飲料水、家電商品の箱に簡単に取り付け持ち運びが便利と、巣ごもり需要と相まって売り上げを大きく伸ばした。
同社のプラスチック成型品は、機能性とデザイン性に優れ、捨てるのがもったいない秀逸なものが多い。「プラスチックにしかできない商品もある。作る側の責任と使う側のモラル、行政や自治体との連携は持続可能な未来に欠かせない。」というのが、副社長の信念である。
昨今では、感染症対策として有効なトイレの蓋うらに貼るシート「アドレット」が話題である。今般のパンデミック以前から扱っており、衛生的な観点から「トイレの蓋を閉めて流す」ことを啓発してきた。ウイルスや菌は排泄物に含まれることから、蓋を閉めることで飛散する感染リスクを回避、また、「アドレット」自体が、消臭、抗菌、抗ウイルス機能を保持していることから、さらなる高い効果に繋がる。
コロナ禍によって一気に注目されたのをきっかけに新しい生活の習慣としての定着を図り、同商品を多くの自治体や学校に寄贈、公衆衛生の向上に一役買っている。自治体のマスコットキャラクターとのコラボレーションも好評で、様々な属性に広がる要素となった。
「トイレは蓋を閉めて流すことが当たり前の世の中にしたい。救える命や子ども達の将来を守りたい。」衛生商品の関連商品として、ドアノブ用、スマホ用などのシールも積極的に展開している。
副社長の大好きなうどんで香川を盛り上げるため「シン・うどん容器(意匠登録済、PAT.P)」を開発中。軽量で把手があり持ちやすく、注ぎ口からは出汁が飲みやすい。高齢者や障がいを持つ人の利用、小さい子どもに取り分ける際にも使いやすい画期的で多様なデザインが目を引く。これで第5次さぬきうどんブームを起こす野望を持っている。
「アドレットで感染症を抑え景気が良くなれば、その先で我々の製品がきっとお役に立つ。さらに、さぬきうどんブームで地域が元気になればみんなが幸せになる。」大きな器と先見性で社会全体を捉えている。また、社員同士も仲睦まじく、明るく風通しの良い社風を感じさせる。
生産者と消費者、さらに地元に暮らす人々みんなの幸せを運び、持続可能な未来に繋げてくため、挑戦は尽きない様子である。
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※掲載の内容は、令和4年9月22日現在のものです。また、提供データ、画像を含みます。
中小企業等が企業経営の中で抱えるアイデア段階から事業展開までの知的財産に関する悩みや課題を一元的に受け付け、知的財産に携わる様々な専門家や支援機関と共同してその場で解決を図るワンストップサービスを提供する「知財総合支援窓口」を都道府県ごとに設置し支援を行っている。