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みんなで一緒に「てんこす?」

山岡美和さん、早川賢治さん   まこと

山岡美和さん
 高知市の中央公園の一角に、高知県内の産品にこだわったお店があるのを知っていますか?今回は、そのセレクトショップ、「てんこす」を運営する株式会社まことの山岡美和さんと早川賢治さんを訪問し、お話をうかがってきました。 
「てんこす」店舗 「てんこす」店舗 -まず、お店の概要を簡単にご紹介いただけますか? 山岡さん ―高知県内で作られた食べものや飲みもの、雑貨などを中心に扱うお店で、高知県産品にこだわったセレクトショップです。店内には、高知県産の食材を使った食事ができるカフェも併設しています。2010年2月19日にオープンしたところで、お店を運営するのは「株式会社まこと」です。
高知県産の食材を使ったカフェメニュー ―お店の名前も会社の名前もユニークな名前ですが、どういう気持ちを込めて付けられたのですか? 山岡美和さん 山岡さん ―会社の名前は、亡くなった父親の名前の一字をもらって「まこと」と付けたんですけど、会社としては誠心誠意「誠」の事業・商売をしていきたいという意味も込めています。会社を興すときも、亡き父が残してくれたお金を母から借りて事業資金として使わせてもらいました。
早川賢治さん 早川さん ―「てんこす」は、土佐弁で「頭のてっぺん」のことです。高知県の地場産品を扱うお店なので土佐弁のイントネーションを入れたかったのと、「てんこすの木」というものを、地場産品を扱う方や商店街の方みんなと一緒に天を超すくらいに成長するお店にしていきたい、というイメージで付けました。ロゴデザインは、くじらと山のてっぺんから木が生えたイメージで「ほにや」さんにデザインしていただきました。
―「てんこす」は、どんな経緯でできたのですか? 山岡さん ―実は、数年前に、商店街の中で「まちの駅」の運営に携わったことがあるんです。四国経済産業局の補助金を使って。そこは3年で終わってしまったのですが、高知の商店街青年部のメンバーの活動拠点になっていたんで、終わるという話が出たとき、みんなで毎晩残す方法を話し合ったんです。「補助金をもらって3年でなくなるのではダメだよね、一過性のイベントとして終わらせてはダメだよね、事業として成り立つものでないといけないね」と。そんななかで、早川さんらと次の事業に着手しようという話になり、この事業を立ち上げたんです。
てんこす店内の様子 ―お店で取り扱っている商品は、高知県産品にこだわっていらっしゃいますが、商品集めはどのようにされたのですか? 早川さん ―事業着手からオープンまで3ヶ月という短い期間でしたが、様々な関係団体のご協力を得て、役員3人が手分けして高知県内の全市町村の地場産品業者をまわって、70業者・700アイテムの商品を揃えることができました。その後も、常に情報をいただいているので、順調に取引アイテム数は増え、今は300業者・のべ3000アイテムを超えたところです。
  てんこす店内の様子 ―山岡さんが事業を興こそうと決心され、事業を立ち上げ、現在に至る過程には、たくさんの人が関わっていたのですね。ところで、商店街に関わるようになったキッカケも何かあるのですか? 山岡美和さん 山岡さん ―とにかく、なんでか商店街が好きなんです。大学は高知工科大学の社会システム工学科だったのですが、大学4年生の頃から「商店街と関わることができたらいいなぁ」と思っていて、修士論文は商店街のことを書いたんです。ただ、大学を卒業するときは、まだまだ未熟者だったし、高知の商店街や商工会議所が活発に動いていた時期で、自分が関われる余地はなかったので、住民参画型のまちづくりに取り組んでいる徳島のコンサルティング会社に入りました。そこでいろいろなまちづくりに関わらせていただいたのですが、4年たったところで、高知の商店街の理事長から声をかけてもらったんです。
-コンサルティング会社で、徳島のまちづくりに関わられたということですが、高知の商店街に関わるようになって、感じるところはありますか? 山岡美和さん 山岡さん ―とにかく高知の商店街は、商店街の中だけでなく、商工会議所、中央会、県や市とも仲が良いんです。関係者の調整ができずに事業が止まったり潰れたりする地域もありますが、高知の場合は足の引っ張り合いがあまり無いと思います。あと、高知県外のコンサルタントには、「あんたのような、商売をしたことの無い者が受け入れられるようなところは無いよ」、「すごくいいところに行ったね」と言われます。
―「商売をしたことのない外の人を受入れる」とか、「足の引っ張り合いでなく前向きな議論をする」というのは高知人の気質によるものでしょうか? 山岡さん ―これまでの商店街の理事長が、「これからは商店街単位でなく全体でやっていかないかん」という風潮をつくってきたんじゃないかなぁ、と思います。それが今の若手の世代になって、何とか商店街という縄張りをあんまり気にせず動くようになったのかなと思います。
早川さん ―山岡は、商店街同士のつなぎ役というか、潤滑油となって、組織を上手に動かしていると思います(笑)。
山岡美和さん、早川賢治さん -お店のことや商店街のことなどお忙しいと思いますが、休みの日は何をされているのですか? 山岡美和さん 山岡さん -家でボーッとしている時も「てんこす」の商品のことが気になっています。「あの商品はてんこすに無いな~」とか・・・。周りの人に「趣味は仕事?仕事しているときが一番楽しそうね」と言われます。「てんこす」引きこもりなんです(笑)。 山岡美和さん、早川賢治さん 早川さん ―「オンとオフを切り替えろ」と言ってるんですけどね・・・(笑)。 ―商店街が好き、商店街の方々が好きというだけでなく、大学や社会で十分知識を蓄えたうえで、周りの人々の協力を上手に得て事業に取り組まれているのですね。これからも楽しみですが、将来の目標やそのために心掛けていることなどを最後にお聞かせください。 山岡美和さん 山岡さん ―「『てんこす』は、高知市の中心商店街にあるお店」ということを常に意識して事業展開していきたいと思います。とにかく、商店街の役に立つお店でありたいです。まだまだ、ひよっこで皆さんの足元にもおよびませんが、ゆくゆくは、商店街に不備なところ、これまでの商売人だけではできないことをフォローするような存在になれたらいいなと思って、やっています。そのためには、自分のお店がしっかりと地に根を張らないといけませんが、そのうえで、ゆくゆくは他の県との交流もしていきたいと思います。


掲載日:2012年1月31日 取材者:M・M