みんな来い!
―ジョブカフェでシューカツまるわかり―
大内由美さん 愛媛県若年者就職支援センター(ジョブカフェ愛work)
http://www.ai-work.jp

シューカツで心がおれそうな学生。その逆に、実はもっと悩まなければならないのに、あまり悩んでない学生。一方で、学生を採用したいのに、応募者が少ないと悩む企業。シューカツには色々な悩みがあります。そんな人達に「みんな来い、悩んでいる人も悩んでない人もみんな来い!」と力強く呼びかけている愛媛県若年者就職支援センター(ジョブカフェ愛work)のセンター長、大内由美さんにお話をうかがってきました。



料理や人をもてなすことが好きだったので、その頃大流行していたペンション経営を夢見るようになりました。ガイドブックがたくさんあって、それを見ると「ワー」っと夢が広がるのですが、仕事となると、分からないことだらけでした。
これは体験するしかないと思い、ガイドブックから好きなペンションを20軒ほど選び、「住み込みで体験させてください」と、今思えば拙い手紙を出したところ、「仕事にきていいよ」と返事をくれたペンションで、働く体験をさせてもらいました。
ペンションでは、毎日が忙しく、初めてのことばかりで、失敗して叱られ、うれしくて泣いて、本当に貴重な体験でした。
そして自分で出した結論は「ペンション経営には人生経験が必要で、今すぐには無理だから、社会に出て働こう」というものでした。
今になって思えば、"ひとりインターンシップ"みたいなもので、冒険を成し遂げたような喜びと、他人への感謝の気持ちを感じた素晴らしい体験でした。
大学を卒業して、いろいろ経験を重ねた後、派遣業務に興味があったことから、大手人材派遣会社に就職しました。
30歳の時に松山に戻り、営業職を希望し、就職活動を行いました。女性の営業が少ない時代だったからでしょうか、数社から採用通知を頂きましたが、派遣業務をやり残した感じがして、再び地元の派遣会社に就職しました。



当時、派遣で働いている女性は輝いていました。自分の仕事にプライドをもって、技術や能力や人柄で、たとえ短期間でも派遣先企業に貢献できるんじゃないかという思いで、自ら"派遣という仕事"を選んでいる女性が多かったですね。
その後、バブル崩壊から雇用環境が急激に変化し、「仕事がないから派遣で働く人」が増えていったように思います。事業縮小やリストラも珍しくない中で、派遣先の環境も不安定になっていました。
そのような中で、派遣先企業と派遣スタッフの間で、自分が果たしている役割に疑問を感じるようになりました。
もう少し違う視点で、違う役割ができないかと感じ、「働く人の人生に関わる仕事がしたい」と思い立ち、資格制度が始まったばかりのキャリアコンサルタント資格を取得しました。
独立も考えましたが、愛媛県就職支援センター所長を経て愛workのチーフコンサルタントになりました。仕事は忙しかったですが、充実した毎日を送ることができました。本当は、支援の現場でもっと若者からの相談を受けたかったのですが、いまは、センター長として、愛workのスタッフの仕事がうまくいくようにバックアップし、よりよい支援を追求することが役割だと感じています。



また就職をゴールにしないために「働くこととは何か」、就職後の「自分の人生」についても考える機会をつくっています。
徐々に、中小企業で働くことが、自分の望む働き方や人生につながることに気づく学生がでてきています。
※マルワカリWEB:これまでの企業紹介サイトと全く違い、学生視点での情報(中小企業で働いている自分の姿、生活、将来像)等をWeb上で発信するシステム。

一方で、受け身ではダメだと意識の転換ができた瞬間に、シューカツが一気に進む場合が多くあります。意識の転換ができない限り、学生が中小企業に目を向けても、中小企業には、その学生はあまり魅力的に映らないですよね。
しかし、そういった事は自分一人ではなかなか気づきません。愛workで、相談やセミナーを受け、他者と関わることで気づくことも多くあります。
―就職がなかなか決まらない学生さんも、そしてシューカツを始める前の学生さんも、まず愛workに行ってみたら?とお伝えしたいですね。そのほか、就職活動の現状についての思いはありますか。




一方では、多くの学生が、面接会場で、マニュアル通りの同じようなことを言っています。これは学生のせいではなく、シューカツのシステムがそうさせているのだと思います。もっと、企業も学生も本音を出す場を作ったらどうでしょうか。愛workとしても、そんな場づくりに取り組めればいいなと考えています。
実は、そういった思いもあって、5月から個人的に「青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム」に通うことにしました。このプログラムでは、コミュニケーションの場づくりができる人材を"ワークショップデザイナー"と位置付けて、ワークショップの企画・運営ができる専門家の養成を行っていて、「今必要な学びはまさにこれだ」と思って通っています。
この経験と学びを愛workの仕事に活かしたいと思っています。



実は、この講座は、事前に選考試験があり、グループ面接を受けました。そのとき、私は全く準備をせずに受けてしまいました。普段、学生に「面接の準備をしておきなさい」と口酸っぱく言っていたのに、自分が準備してなかったんです。学生には、「ぶっつけ本番の面接などあり得ない」と言ってたのですが・・・反省ですね。ただ、事前準備はしなくても、「学ぶ目的と学びたい思い」が自分の中ではっきりしていたので、話は下手でもちゃんと話せたということも学生に伝えたいことです。

場の目的はいろいろだと思います。例えば、参加した人の自主性を生む場だったり、アイデアを生む場であったり、単純に楽しさを生む場かもしれないし、連携を生む場かもしれません。
愛workで言えば、シューカツの場を作ったとしても、若者だけが集まって何かをするのではなくて、企業にも入ってもらっていいのではないかなと思うんですよ。いっそのこと保護者も入れちゃえと考えたりもしています。そうすると子供の苦労も分かりますよね。勿論、難しさがあるかもしれませんが、私は実現するために、動きたいと思っています。

キャリアコンサルタントと一回だけ話して、それですっきりして帰る人もいます。愛workにはいろいろな活用方法があるんです。まさに、「みんな来い!」ですね。

掲載日:2012年7月10日 取材者:M・T