目線を変えて見ると宝の山
土居一徳さん 土居真珠 https://www.doi-pearl.co.jp

日本一の真珠生産高を誇る愛媛県宇和海地域。リアス式海岸の美しく豊かな海で育まれた真珠は、人々の心を魅了し、広く愛されています。宇和島で真珠養殖が始まって100年余り。先々代が始めた真珠養殖を受け継ぐとともに、養殖場見学ツアー、パールパウダーやパール食の新商品開発など、新しい事業展開に取り組む有限会社土居真珠の土居一徳社長に宇和島真珠にかける想いを伺ってきました。
―土居さんが「真珠のまち・宇和島」で家業を継ごうと思ったきっかけは何ですか? 土居さん おおきなきっかけは、「師との出会い」と「アメリカ留学」ですね。大学は水産系だったのですが、それは家が水産をやっているという漠然とした理由からで、真珠をやろうとは考えていませんでした。確かに、宇和島が「真珠日本一」ということは知っていましたが、「宇和島の真珠ってすごい」という意識は特になく、逆に「宇和島はなんもないぞ」みたいな意識しかなかったですね。大学時代は褒められた話じゃないですが、あまり大学にも行かずに過ごしていました。ただ、大学4年生の頃、研究をしなくてはいけなくなって、うちの大学にひとりだけ真珠に関心のある先生がいたので、たまたま話を聞きに行ったんです。すると、先生から「おまえは学校にいるよりは、違うところに行った方がいいだろう」といわれ、真珠科学研究所を紹介されました。そこに通いながら、そして、先生からいろいろな話を聞くうちに徐々に意識が変わっていきましたね。その先生がいまでもアドバイスをいただいている真珠の師であり、人生の師です。その後、知識を深めるためにアメリカに向かいました。


ちなみに、パールパウダーとは真珠粉のことです。真珠の中には「核」というドブ貝の貝殻で作った丸い玉が入っています。また、真珠には内部に有機物などの不純物が含まれていることが多く、そのまま真珠を粉砕すると、ほとんどがそのドブ貝の粉、不純物の混ざった粉ができてしまいます。当社の「真珠化粧品・花真珠」で使用しているパールパウダーは真珠を育てるアコヤ貝の真珠層だけを粉砕して作っています。アコヤガイを内側の真珠層の部分だけになるまで手作業で削り落としていきます。
※愛媛県資源循環優良モデル認定制度
愛媛県が平成13年度から実施している制度。資源循環型社会の構築を目指し、モデルとなるようなリサイクル製品、廃棄物の発生抑制(リデュース)・再利用(リユース)・再資源化(リサイクル)に積極的に取組んでいる事業所や店舗を優良モデルとして認定し、その存在を広く県民にお知らせするとともに、他の事業者等への波及を図っていくことを目的としている。












販売に重点を置くことも大切ですが、かといって、全国を転々としながら売り歩くようなことは考えていません。そうなると、宇和島での活動に支障が出かねませんから。外部での販売は、刺激を受ける、頭をリセットさせる、いろいろなものを見て帰る、そのように使っています。目線を変えることで、改めてこの業界の面白さが分かることもあります。
新商品については、はっきり言うと、まだまだ厳しい面があります。ただ、いずれ、そういうものが有名になったり、別の新しいものを作ることで、需要が出てきたりすれば、雇用も生まれますよね。そこで、新しい真珠関係の産業がひとつできあがって、そこにまた雇用が生まれて、また一歩「真珠のまち」に近づけるんじゃないかなとずっと考えています。なんだか真珠屋じゃないみたいな話に聞こえるかもしれませんが(笑)。でも、目線を変えると、やっぱり、この業界は宝の山だと思っていますよ。

掲載日:2012年9月28日 取材者:K・T