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田舎の苦楽仕(くらし)

吉田絵美さん NPO法人マチトソラ

吉田絵美さん
 昔ながらのうだつの町並み(マチ)が残り、祖谷の美しい山並み(ソラ)を望む徳島県三好市池田町。四国のへそと呼ばれるこの土地に、様々な取組みで地域を盛り上げている団体、NPO法人マチトソラがあります。この団体を設立した主要メンバーの一人、吉田 絵美さんは、総務省の事業である「地域おこし協力隊」として、「うだつマルシェ」、「マチトソラ芸術祭」など非常にユニークな取り組みを行ってきました。三好市池田町に来て3年、 人を呼び寄せ続けている吉田さんにお話を伺いました。
徳島県三好市池田町の風景 -徳島市出身だそうですが、最初は東京で働いていたそうですね。 吉田さん  最初に就いた仕事はメーカーのデザイナーで、その後転職して、インテリアショップのバイヤーをしていました。8年くらい向こうで働き、ものづくりとか、店舗づくりとか、そういうものに関わっていました。

吉田絵美さん

-徳島に戻ってきたきっかけを教えて下さい。 吉田さん  今から振り返ってみると、きっかけは東日本大震災です。
 地震が起こった瞬間はそうじゃなかったんですが、その後の東京の生活でちょっと不安ができたというか、色々複合的なんですが、いつか帰ろうと思っていたし、田舎のほうが面白そうかなという流れが自分の中に徐々にできてきた時期でもあったんです。
 田舎だったら、自分が納得いくように働けるのかなっていう思いもあったかも知れません。「自分がいいなと思うモノを扱えるお店を作れるのでは」みたいな。

徳島県三好市池田町の風景

-そこで選択されたのが「地域おこし協力隊」ということですね。 吉田さん  地元に帰っていきなり起業といっても、徳島には高校生までしか住んでいなかったため、一から販路開拓とかちょっと想像がつきませんでした。
 地域おこし協力隊だと、スタートアップとしての期間が3年あり、土台が作れるのかなという思いがありました。
 岡山で協力隊をやっている知り合いがいたので、協力隊のサイトはよく見ていたんです。色々な自治体が募集を出しているんですが、ちょうど三好市からの応募が出ていて、これだと思い応募しました。
 今までやってきたことを活かしたいという気持ちもありました。
 大学も行って専門学校も行って、デザイン関連のことにすごく投資してきたんですが、徳島には何も還元してなかった。徳島のためだけじゃないんですが、何かこっちで面白いことができるんじゃないかと。
※地域おこし協力隊:1~3年の間、地方自治体の委嘱を受け、地域で生活し、地域の活性化に資する活動に従事する。その地域への定住・定着を図ることで、地域力の維持・向上を図ることを目的とする。
うだつマルシェ

うだつマルシェ

-先日、うだつマルシェに遊びに行きました。すごい数の人でびっくりしました。 吉田さん  今回は多かったですね。出店者も今までで一番多かった。出店者さんにいつもアンケートを取ってて、何人買ったか、いくら売れたか聞いてるんですが、普段の倍くらいだったと思います。ただ、今回みたいに出店者が100近くになると多すぎたなと思っています(笑)。
 前回は、お客さんが4~5千人くらいで、出店者は80くらいだったんですが、それを超えたら手に負えなくなってきます。
※うだつマルシェ:年に数回、三好市池田町に様々な作り手(作家)が集まり、ユニークな手作りの雑貨や食品を販売しているマーケット。四国のみならず、遠くは京都府や三重県からの出店もある。
うだつマルシェ

うだつマルシェ
-マルシェを始めたきっかけは?  近所のおばあちゃんが、一緒に何かやりたいと話していたので、じゃあやりましょうかって声をかけたのがきっかけです。おばあちゃんも時々手作り市とかをしていたので、それを若者向けにしてみました。
 マルシェをやって分かったのは、自分で作って売りたいという人が四国にも結構いるんだなってことですね。
 苦労もありましたが、マルシェでたくさんの人に知り合えて、どうにかやってこれました。出店者さんはもちろん、ボランティアの方々とか、仲良くなった人が友達を連れてきてくれたりとか。回数を重ねるうちにそういうメンバーと仲良くなって、何とかやっていけるのかな、という自信が出てきました。
 また、地域おこし協力隊を3年間やってるうちに、自分と好みが一致しそうな作家さんとも多く知り合えたので、これだったら自分がまとめてうまく外に販売していけるという自信もついていきました。

吉田絵美さん

徳島県三好市池田町の風景 -会社員時代と比較していかがですか? 吉田さん  会社員はやっぱり違うんですよ。自分の年収の100倍以上の買い付けとかするわけじゃないですか。
 協力隊は、予算は自分が扱える範囲ですごく計算しやすいんですが、その反面、東京みたいに淡々と生活できるという感覚はありません。ある意味明日のことも分からないところがあります。

-その日その日を必死に考えてないといけない。生きるために狩りに出かけるようなものですね。 吉田さん  そうですね。でも、狩れるものが増えてくるというか、最初はドングリとかでしたが、段々とクルミとかも拾えてきました(笑)。
 ただ、地方での暮らしって、儲けることじゃなくて「続けていけるか」っていうことのほうが重要だと個人的に思っています。そのためには、できることをやる。できることをやっていったから、マルシェが続けられたと思うんです。

徳島県三好市池田町の風景

? -以前の仕事も、マチトソラ芸術祭も、ある意味うだつマルシェも、「芸術」がかなり関係していると思います。いつからアートに興味を持たれたのですか? 吉田さん  絵を描いたり、漫画を書いたりするのが好きでしたので、デザイン系の仕事に就きたいとは思っていました。
 ただ、私がやっていたのはアートでなくて、デザインなんです。アートとデザインは違うんですよ。アートは自発的なもので、デザインは注文を受けてするんです。
徳島県三好市池田町の風景

-意見を聞いて、まとめていく。今の仕事に通じるところがありますね。 吉田さん  みんなそれぞれだから、一体にならなくて良いと思います。外に出すときに、まとまっているように見せてあげるのか、まとまっていないけどそれを面白くみせるのか、それは監督しだいなんですが、ここは面白い町だよって言うのなら、それぞれが頑張っていることが分かればいいので、別に型にはめなくていいと思うんです。
 食べていける、いけないで考えたら、都会に出て行くのは仕方ないことかもしれないし、給料も良くて、面白い仕事っていうと都会に出ていく可能性が高いじゃないですか。
 でも、田舎にいる人が自分の仕事を「良さげ」に見せたら、都会の人が帰ってくるかもしれない(笑)。

吉田絵美さん

徳島県三好市池田町の風景
-無理矢理引っ張ってくるのではなく、向こうから寄ってくるようにするんですね。 吉田さん  岡山にいる地域おこし協力隊の知り合いも楽しそうにしているし、実例が増えていったら、都会でもやもやしている人が、結構帰ってくるかもしれません。皆が楽しげにしていたら、帰ってきたい人も増えると思うんです。よく言う交流人口じゃないですが、人が来てくれないと何も始まらない。
 こっちに来てすごく感じたのは、若い人がとても少ないということ。若い人がいないとつまらなくなるんです。年齢が近くないと、友達もできないし、出て行きたくなります。悪循環というか、負のスパイラルになるわけです。
 でも、一人、二人来るだけでも大きな変化が起きると思うんです。マルシェをやってたら、色々と人が関わってくれて、若い知り合いが増えてきて、住むのがちょっと楽しくなってきました。
 今、都会に住む若い人に伝えたいのは、田舎への移住はハードルが低いということです。どうにかなるよというのをもっとアピールしていきたいと思っています。

徳島県三好市池田町の風景 -今後はどういう活動をしていく予定ですか? 吉田さん  マチトソラは引き続き活動を続けていきますが、地域おこし協力隊はこの3月で終わったので、自分の会社を立ち上げています。
 マチトソラの事務所でもある「スペースきせる」を改装して、何人かでカフェを運営するのと、実家がある徳島市内で、マルシェで知り合った作家さんや四国内でものづくりをしている人が作った商品を販売するお店を立ち上げます。若い人が楽しめるような地域づくりにつなげていきたいですね。

吉田絵美さん
掲載日:2014年5月16日 取材者:T・K