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地域密着!地元の働くヒーローを紹介

山下圭一郎さん 株式会社池田ケーブルネットワーク https://ikedacable.co.jp/

山下圭一郎さん
 「三好市×仕事」で「みよしごと」。「みよしごと」は、徳島県西部の山間部に位置する三好市で働く、地元のヒーローを紹介する株式会社池田ケーブルネットワークの自主企画番組です。「地方にも魅力的な仕事がある」、「地元のかっこいい人を紹介したい」。そうした想いで同番組を企画・制作するディレクターの山下圭一郎さん。同番組を通じて、地方で働く若い人が少しでも増えたらいいと語る同氏に番組に掛ける想いを伺ってきました。
株式会社池田ケーブルネットワーク社屋

-大学時代は大阪で過ごされたそうですが、卒業後は地元へ戻ってくるつもりだったのですか。  そうですね。実家がトマト農家をやっていて、それを継ぐつもりでした。
山下圭一郎さん

-では、大学時代も農業関係のことを学ばれていたのですか。  いえ、それが全然違うんですよ。大学では建物や公園のデザインをする環境デザインを学んでいました。学生時代には兵庫県姫路市の家島のまちづくりにも参加させてもらうなどの経験も積めました。その経験は、今取材をする中で非常に役に立っていると思います。

山下圭一郎さん

-ケーブルテレビに入社したきっかけは。  大学卒業後は、実家のトマト農家を継いだのですが、その後、縁があって、地元スーパーで働いていました。スーパーの仕事も好きだったのですが、経営者が代わるというときに、たまたまケーブルテレビを紹介され、それが転職のきっかけになりました。入社後数年して、弊社が三好市からケーブルテレビ事業の指定管理を受け、放送業務を全て引き継ぐことになり、市の職員の先輩に基礎から学びました。

池田ケーブルネットワーク社内の様子

-自主企画番組「みよしごと」を始めたきっかけを教えてください。  地方には仕事がないという理由で、都市部に若い人が流出していますが、案外、仕事は地方にもあって、その中で輝いている人も多いということを知ってほしかったんです。日々の取材でそうしたことを実感していたので、そんな人達を番組を通じて紹介することで、地方で働く若い人が少しでも増えたらいいと願い、この番組の企画を提案しました。

山下圭一郎さん

-「みよしごと」ではこれまでに、しいたけ農家、看護師、カフェオーナーなど26人を取材されていますが、取材までどのように進めているのですか。  まず、取材の対象になりそうな人を決めて、情報を集めて、どんなストーリーになるかイメージして企画を書きます。そのあと、実際に話を聞いて、面白そうなときに取材に行って撮るという感じです。

取材中の山下圭一郎さん

-情報集めとは具体的にどのようなことをしているのですか。  取材の対象になりそうな人の情報をその周辺の人から聞いて、事前リサーチをします。「みよしごと」第1号のしいたけ農家さんの場合は、三好市の農業振興課の方から「頑張っている農家さんがいるよ」と紹介を受けて、すぐに現地入りし、取材の対象に決めました。取材では、農家さんはもちろん取材慣れしていないし、僕も初めての取材だったので、手探り状態で進めていきました。

三好市の風景

-第1号に農家さんを選んだことは、山下さんご自身が農家のご出身ということも関係しているのではないですか。  関係していますね。「みよしごと」は、第一次産業をベースにしたかったということもあります。でも、取材をしていくうちに、それ以外にもかっこいい人がたくさんいて、第一次産業にこだわらなくてもいいかなと思うようになりました。例えば、公的な機関で仕事をしている人でもいいなと思っています。通常の仕事だけでなく、プラスアルファの面も頑張っている人はその頑張りをみんなに伝える価値があるんじゃないかと思っています。

取材の様子

-取材中に気をつけていることは。  どっぷり入り込んでしまうタイプなので、あまり感情に流されずに客観的に見るよう心がけています。実際はあまりできていなくて、どっぷり入り込んでしまうんですけどね(笑)。あと、情報が事実なのかどうかはかなり注意していて、一番気をつかうところです。

池田ケーブルネットワーク社内の様子

-「みよしごと」はすごく反響があると聞いています。  放送を開始してからすぐには反響がなく、1年くらいは「あ~、放送しているな」という感じだったんですけど、少しずつ「みよしごと」の名前が定着してきました。昔は取材依頼をするときに趣旨や企画内容を細かく説明する必要がありましたが、徐々に「『みよしごと』の出演をお願いします。」と言うだけで、伝わるようになりましたね。

池田ケーブルネットワーク社内の様子

-視聴者は主に三好市内の方だと思うのですが、距離が近いだけに反応もダイレクトに伝わるのでは。  良いことも悪いことも言われます。僕は池田高校の出身なんですけど、池田高校へ取材に行ったとき、生徒が「僕は『みよしごと』に出演するのが夢です。」と言ってくれました。そういうのが励みになっています。皆さん優しいので、悪いことを言う方は少ないですが、仲のよい人たちからは「今回はいまいちだった」と言われることもあるんです。

山下圭一郎さん

-それほど見てくれているということなんですね。  そうですね。また、近隣の市でも放送しているので、例えば愛媛県の四国中央市の方が放送を見て、取材先のお店に来てくれたりしています。

池田ケーブルネットワーク社内の様子

-仕事のやりがいはどういうところでしょうか。  放送することで反応があれば嬉しいです。「みよしごと」に限らず何でもそうなんですけど、視聴者が放送を見て「頑張ろう」とか、逆に「俺はこうはなりたくない」と思ってくれてもいいし、とにかく反応があると嬉しいし、やりがいがありますね。

-地元の方から取材して欲しいという依頼もあるんですか。  はい、すごく多いです。今年は過去最高だと思います。情報はささいなことでも何でもいいんです。例えば、地元のおばちゃんから、「人の顔の形をした面白い玉ねぎができたから放送して」と言われたり、民宿を経営している方からは、「ツバメが家の中に巣を作って10羽以上いるから取材に来て」とか。昔はこんな情報は軽くみてたけど、案外そういうのが面白くて。そういう情報を出していたら、「私のところもこんなことがあるんよ」ってどんどん情報が集まってくるんですよね。

取材先のしいたけ農家のビニールハウス

-取材や情報収集のため、外に出ることが多いんですね。  できるだけ多くの情報を出したいと思っているので、外に出るよう心がけています。情報を出すと、何かしら反応があります。何に対して反応があるかはわからないので、なるべく多く出したいんです。もしかしたら、視聴者の人生が変わる瞬間があるかもしれません。

-もし、三好市でなく他の地域だと違っていたと思いますか。  例えば、大阪など都市部でもその地域に合ったやり方があると思うんですけど、田舎ならではのほっこり情報は三好市だからできることですね。

山下圭一郎さん

-今後の目標を教えてください。  とにかくいろんなことをたくさん紹介したいですね。ケーブルテレビは規模としては小さいけれど、他の大手の報道機関にも負けないくらい、地域ではうちが一番情報量を集められるようになりたいです。今の放送スタッフはみんなそういう意識を持っていると思います。
 他の報道機関に負けたくないと思うんですけど、他社の記事を見て「いい記事だな」「すごいな」と思うこともあって、勉強になったり、悔しがったりしています。
 僕たちは教えてもらうことができないんです。急に放送の責任者になって、放送の仕事をやっているので、教えてくれる人がなかなかいないんです。そうすると、他の記者と話をして取材の仕方を教えてもらったり、民放やNHKのテレビ番組を見て編集の仕方やテロップの入れ方を真似たり。そういうふうに成長していくしかないですよね。実際に仕事をしている日常生活が成長の場になっています。


山下圭一郎さんとしいたけ農家さん

三好市池田の風景

掲載日:2014年9月26日 取材者:F・H