音楽で街を笑顔に!
鹿庭弘百(かにわ ひろかず)さん 一般社団法人 街角に音楽を@香川 http://www.machikadomusic.net/
日常の中で生の音楽やパフォーマンスに出会う、道往く人々が笑顔や感動を共有し、繋がっていく。音楽で街に温度をもたらし、社会に必要なコミュニケーションの源泉となり、子供たちが安心を感じる大人の幸福な風景になっていく・・・。
そんな風景のある高松の街づくりに向けて音楽を通じて、2007年から活動し、第6回地域再生大賞優秀賞を受賞した一般社団法人 街角に音楽を@香川 の代表理事を務める鹿庭弘百さんにお話を伺いました。
-地域再生大賞優秀賞を受賞された際の率直なお気持ちをお聞かせください。 鹿庭さん 今まで皆さんのおかげで継続することができた活動を、評価していただいて「うれしい」というのが1番の気持ちです。そして東京の授賞式に行って、各地の受賞された方々から感じたことがありました。それは受賞者の心には、根底に「共通する気持ち」があるということです。
-その根底にある「共通する気持ち」とは何ですか。 鹿庭さん ただその時賑わえば良いという考えではなく、「何か継続して大事にしたい」という気持ちです。そういった気持ちがあるからこそ、継続できているのだと改めて感じました。
-丸亀町商店街の再開発を機に 街角に音楽を@香川 の活動を始められたそうですが、取組を始めるにあたって鹿庭さんの心を動かす何かきっかけがあったんですか。 鹿庭さん 私は丸亀町の商店街の鞄屋で生まれ、中学まで高松で育ち、高校からは上京しました。しかし、自身が40歳手前の時に兄が亡くなったことがきっかけで、鞄屋を継ぐために高松に帰ってきたんです。そして、鞄屋を経営する中で丸亀町商店街の再開発が決まりました。その時に今までのお客さん達に強く訴えられたことがあったんです。それは、「商店街が再開発されることは良いけど寂しい」という声です。年配の方に、なじみの原風景が無くなることの寂しさを訴えられたんです。
そこで私は、その寂しさを上回るような「豊かさ」や「魅力」を街に作りたいと思い活動を始めました。
-それでは、そもそも鹿庭さんが音楽を始めたきっかけは。 鹿庭さん 兄がドラムを始めたことです。兄に影響され、中学生の時に近くの楽器屋でドラムを買ってもらい私も始めました。よく、屋上でビートルズのまねをしながら演奏し近所からクレームがきたこともありましたが、唯一楽器屋さんはかばってくれました(笑)
-若い頃、プロの道を目指されていた時期があったそうですが。 鹿庭さん 大学卒業後、CM会社に就職しましたが、どうしてもドラムをしたい熱が収まらず、またプロの道への情熱も冷めず、実は会社を辞めてプロの道を目指した時期がありました。
しかし、プロの道を目指す中で、自分の好きな音楽ではあるものの、仕事としての音楽が結局「衣・食・住」に直結してしまい、だんだんと音楽を続けることに違和感を感じ始めたんです。その頃は、「音楽をする人生」みたいなものに憧れを抱いていたんだと思います。本当にプロでやろうという情熱が足りなかったのかなと。
-家業を継ぐために東京から高松に戻って来られたということですが、正直東京への未練はなかったんですか。 鹿庭さん 高松に戻ってきた当時はもちろんありました。夢に東京での生活が出てきたことがあるくらいです。
-今はどのようなお気持ちですか。 鹿庭さん 確かに東京に対して寂しく感じていた時期はありましたが、一般社団法人 街角に音楽を@香川 を作ってからそのような気持ちはなくなりました。
なぜなら、一般社団法人というプラットホームをもってからは行政にも民間にも、音楽に対するロマンを語り合える人がいたり、気持ちが通じる人がいて、行政や民間の人達を繋いで活動ができているからです。単純に肩書きではなくて、「こういうのをやりたい!」と時に身を乗り出してくれる人が、それぞれの場所にいてくれるんです。
本当に 街角に音楽を@香川 をもってよかったなと心から思っています。
-鹿庭さんの理想とする街の在り方とは。 鹿庭さん 「住んでいる人達自身が楽しんでいる街」です。
街に生の音楽があって人が笑っていたりすると、街の安心感につながると思います。特に香川には音楽や楽しさを共有する「場」が少なく感じていました。徳島には阿波踊りという共通の精神的な支柱はありますが、香川にはそういうものはありません。しかし、だからこそニュートラルで様々なものを受け入れる寛容性が持てると思います。人がただすれ違う状態ではなくて、一つのもの(=音楽)をみんなで共有して一緒に笑ったり、「いいね!」って楽しさを共有できるような、安心感のある街を作りたいんです。
-鹿庭さんにとって音楽とは。 鹿庭さん 「生涯の友達」であり、「不思議なもの」です。
僕自身が色々と助けてもらった「生涯の友達」であることはもちろんです。そして「不思議なもの」というのは、人間は皆違うのに、一つのメロディーやコードの進行になぜか同じように美しく思ってしまう不思議なものだということです。人間の中にあるDNAと心の底に響いてくるものなんでしょうかね。要はグッドミュージックはどの人にとっても、グッドミュージックだからこそ、これからもそんな音楽で街を豊かにしていきたいです。
掲載日:2016年6月23日 取材者:H・K