水族館が発信する四国の魅力! -地域の未来を育むために-
片山 豊心さん 樋口 可南子さん 四国水族館
左から、樋口 可南子さん、片山 豊心さん
瀬戸大橋のたもと、香川県宇多津(うたづ)町にある四国水族館。瀬戸内海や太平洋・黒潮、最後の清流・四万十川や仁淀川など、四国水景をテーマにした水族館は2020年6月にグランドオープンし、開館5年目を迎えた2024年8月には来場者300万人を突破しました。四国全体の活性化を目指す民設・民営の水族館で、広報担当として水族館や四国の魅力を発信する地元・宇多津町出身の片山さんと、イルカの飼育スタッフを担当するママさんトレーナーのロールモデル・樋口さんにお話を伺いました。
片山さん(写真左)
私は広報担当として、プレスリリース、メディア対応、SNSの運営など水族館の裏方を担っています。2019年に宇多津町にUターンし、四国水族館に入社しました。
樋口さん(写真右)
私はイルカの飼育スタッフを担当しており、イルカのプログラム(イルカプレイングタイム)も行っています。2022年に四国水族館に入社し、子育てをしながら働いています。
―四国水族館で働くことになったきっかけを教えていただけますか。
片山さん私は宇多津町出身で、小さい頃から自然や動物と触れ合うことが大好きでした。また、幼少期に見たシャチと女の子のアニメが衝撃的で、その時から水族館で働くことに憧れていました。一般の大学に進学しましたが、就職活動で自分のやりたいことと向き合ったとき、「やっぱり水族館で働きたい!」という思いが強くあったので、海洋関係の専門学校に入学しました。卒業後は、福岡や京都の水族館で勤務し、ショーの制作にも携わりました。そのような中、宇多津に四国水族館ができるという噂を耳にして、「地元に水族館ができるなら働いてみたい!」と思い、求人が出た瞬間、飛びつくように応募しました。
樋口さん私は大阪出身で、小さい頃から「水族館で働きたい!」と思い、専門学校に入学し大阪の水族館に入社しました。そこで夫と出会って結婚し、夫が四国水族館で働くことになったので宇多津町に移住することになりました。正直、四国に行くと決めたときはノリと勢いでした(笑)。ずっと大阪で過ごしていたので最初は地元を離れるのは寂しかったですが、満員電車から解放され、すぐに自然に触れられる四国の生活を楽しんでいました。そのような中、四国水族館で働く夫を見ていると「自分ももう1度飼育員がしたい!」という思いが強くなり、求人に飛びつきました。
(左)片山さんも担当するInstagram。フォロワーは3.7万人(2024年10月22日時点)。一番人気はゴマフアザラシの投稿。
(右)イルカプレイングタイム。樋口さん(写真中央)がイルカと息をぴったり合わせて、合図を出しています。
―お2人とも水族館が大好きなんですね。これまで苦労などはありましたか?
片山さんやはり新型コロナウィルスですね。私は四国水族館立ち上げの時期から関わっているのですが、オープンしたのが2020年のコロナ禍真っ只中でした。オープン時期の延期や当面休館、入館制限をはじめ様々な影響があり、現在、樋口さんが担当しているイルカプレイングタイムも当時はできませんでした。休館中の様子をSNSで発信するなど、館内で検討や工夫を重ねていましたが、あの時は本当に辛かったです。近隣県の学校が修学旅行の代替旅行として訪れてくれることが多かったので、それには助けられました。
オープン当初はマスクやフェイスシールドを装着し、感染症対策をしながら開館していました。
―そのような機会が子どもにも知っていただけるきっかけになったと思いますし、教育の観点でも重要ですね。樋口さんはこれまで働く中で苦労はありましたか?
樋口さん私はやはり出産・育児との両立ですね。飼育スタッフは重たい物の運搬や潜水などハードな仕事も多いので、職場の方々の配慮で産前休暇の2ヶ月前には営業課に配置変えしていただきました。育児休業後は子どもが体調を崩して職場に迷惑をかけてしまうこともありましたが、周りの方々がサポートしてくださり、働きやすい環境だと感じました。
四国水族館は男性が育休をとっている実績もあります。同じく四国水族館の魚類担当として働く夫と協力しながら、仕事と子育ての両立を頑張っています。
イルカの餌の時間。餌を食べやすいように与えることを意識し、目の開きや餌の食べ方などに注目して体調を確認している。
―コロナ禍や子育てなどの苦労も経験されながら業務に取り組まれているんですね。そのような中、2024年8月19日には来場者300万人を達成されました。おめでとうございます。
片山さんオープンしてからたくさん苦労はありましたが、それらを乗り越えて300万人もの方々に来ていただいて、お客様には感謝しかありません。
300万人目のお客様来場の瞬間!盛大にお出迎えしました。
300万人来場の様子を見守る片山さん。
記念すべき300万人目は、静岡から来られたご家族でした!「特大ゴマフアザラシぬいぐるみ」が贈呈されました。
(左)セレモニーに向けて準備中の片山さんと樋口さん。セレモニーの司会はなんと、樋口さん!
(右)アナウンサーのような美声で、セレモニーを盛り上げました!
―営業日1536日目で300万人達成ということで、沢山のお客様が来場されていますね。そのなかでやりがいはありますか?
片山さん広報担当として、四国水族館の魅力や「行ってみたい!」と思ってもらえるような内容を発信していきたいと思っています。Instagramもたくさんの方に見ていただけてとても嬉しいですが、その中で特に、「ぎょしゅいん」の取り組みはすごく良かったと感じています。
―「ぎょしゅいん」、何かと響きが似ているような。
片山さん「魚朱印(ぎょしゅいん)」は、四国の文化のひとつ「四国遍路」の御朱印(ごしゅいん)にちなんで、「水族館版の御朱印」としてスタートした取り組みです。四国では四国水族館を含む8つの施設で取り扱いしており、水族館施設巡りがより楽しくなります。他の水族館からお声がけいただいて始まりましたが、魚朱印をきっかけに四国のさまざまな地域に足を運んでいただく機会になればと思っています。
四国、香川県、そして宇多津町出身としても、四国水族館だけで盛り上がるのではなく、地域を巻き込んで四国全体を盛り上げていきたいです。館長もよく申し上げている「民設・民営だけど志はパブリック」は当館のキーワードですね。
魚朱印は、地域や水族館の特性・個性を生かしたオリジナルデザインとなっています。
―四国水族館や片山さんの思いを1つ形にしている取り組みが「魚朱印」ということですね。地域と連携した取り組みとして、他にはどのようなことをされていますか?
片山さんこれまで、宇多津町のイベント「アロハナイト」を当館で実施したり、町内小学校への出張講座や、卒業制作のお手伝い等を実施しております。また、開業記念日には毎年地元中学生がお祝いの演奏をしてくださいました。最近では、館内ツアーとセットにした「移住者交流会in宇多津」の会場として利用いただき、大変好評でした。
また、2024年10月12日(土曜日)から11月17日(日曜日)まで、丸亀市と連携したニッカリ青江公開コラボ企画展「ニッカリさかな展」を開催しています。この企画は2年前にも開催し、丸亀市や当館を周遊してもらえるようなスタンプラリー形式で行ったので、刀剣に興味がある方も水族館に来ていただけました。
(左)2024年10月12日(土曜日)から11月17日(日曜日)に開催されます。日本刀と水族館の組み合わせは、日本刀好きのスタッフのアイディアです。
(右)前回はニッカリ青江の模造刀を展示しました。今回も、ニッカリ青江の逸話にちなんだ魚たちや、香川県や丸亀市の名産品、食文化を紹介します。
―四国全体を盛り上げるために様々な取り組みがされていらっしゃいますね。樋口さんのやりがいはいかがですか?
樋口さん動物は毎日気分も違うし、いろんな変化を見せてくれます。昨日できていなかったことが今日できるようになったり、反対もあったり。「次はこうしてみよう、次はこれをやってみたい」と自分の気持ちにも変化を与えてくれます。毎日同じではつまらないので、違う刺激を動物たちからもらえることが楽しいです。
イルカとコミュニケーションをとる樋口さん。動物が楽しめるように自分自身も楽しみながら動物と接することを心がけているそう。
―広報担当、飼育スタッフとしてそれぞれのやりがいがありますね。お2人は今後どのような将来像を思い描いていますか?
片山さん今後も自治体や教育機関、地域を巻き込む企画やユニークな企画を考え、何回来ても楽しんでもらえるように努力して、四国全体をさらに盛り上げていきたいです!
地元の小学生もよく来てくれるので、10年後20年後に「実はあのとき来てました!」という子が四国水族館で働いてくれたら嬉しいですね。
樋口さん趣味の大衆演劇を見て、リフレッシュもしながら育児も仕事も楽しくやっていきたいです。これから私以外にも、四国水族館で働きながら出産・育児を経験する人もいると思いますが、そこで私が沈んでいたら「しんどいのかなぁ。」と思わせてしまうかもしれないですよね。私が楽しく仕事も育児もすることで、「育児もしながら楽しく働けるんだ!」と思ってもらえるようにしていきたいです。
小さな願望としては、私がイルカプレイングタイムに出ているときに、子どもに見に来てもらいたいです。お腹にいるときから一緒にステージにいるので・・・。
―水族館や四国の魅力を発信する広報として、ママさんトレーナーのロールモデルとして、ご活躍されているお2人も四国水族館の見どころですね。
魚たちと四国水族館の未来を見つめるお2人。
画像提供:四国水族館
掲載日:2024年10月22日 取材者:K・T、N・Y