四国びとホーム > すべての記事をみる > 「やりたい」「やってみたい」をかたちに

「やりたい」「やってみたい」をかたちに

濵田 規史さん コダテル

濵田 規史さん

四国・愛媛県の南西部に位置する八幡浜市にある小さな一軒家「コダテル」。「みんなで企てるヒミツキチ」をコンセプトに、訪れる人々がワクワクできるような場所として誕生しました。地元の子どもたちや学生、社会人、旅行者、ビジネスマンなどたくさんの人々が集まり、思い思いに過ごしながら、学んだり、遊んだり、働いたり、八幡浜を観光したり、おもしろいことを企画したり。「コダテル」では、あらゆる人の内に秘めた「やりたいこと」を実現するため、様々な視点からサポートを行っています。今回は、ここでの活動を通じて、多くの人に寄り添い、支援を行っている濵田代表にお話しを伺いました。

―コダテルを始めたきっかけは何ですか。

金融機関で10年以上働いた後、何か新しいことを始めたいという思いから退職し、コダテルを起ち上げました。

金融機関で中小企業のお客さんやこれから創業するお客さんとお話ししていく中で、計画作りの重要性や、実際に事業を成功に導くための支援が必要であることを実感しました。そこでコダテルを通じて中小企業や創業者の新規事業・改善に深く関わり、その方々の 構想や事業を実現する手助けをしたいと考えるようになりました。また、幼少期から何かを企画することが好きで、パソコンを使った企画作りに興味を持ち、いつか企画の仕事をしたいと思っていました。

和紙の写真

―では、ざっくりとコダテルとはどのような場所なのでしょうか。

利用者が自分の居場所として、自分のやりたいことを気軽に表現でき、やりたいと思えば、実現に向けて支援してもらえる場所ということですかね。

―とても素敵な場所ですね。では具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

コダテルでは、「やりたいこと」を「くわだて」と名付け、「働く場」、「学び場」、「交流の場」の3つの役割のもと、「くわだて」の実現を支援しています。「働く場」として、コワーキングスペースの提供、「学びの場」として、プログラミング教室や未来学の開講、「交流の場」として、イベントの開催や宿泊事業を展開しています。会員になった皆さんがこれらの3つ場をうまく掛け合わせて活用しながら、それぞれのワクワクするような「くわだて」を生み出していく、そのお手伝いをしています。

コダテルの写真

―このような場所は全国的にも珍しいと感じますが、アイデアはどこから生まれたのですか。

コダテルのアイデアは、私自身がやりたいことを組み合わせて作り上げました。最初はコワーキングスペースを中心に考えていましたが、市場調査を通じてコワーキングだけでは集客が難しいと判断し、教育事業と宿泊事業を加えて3本柱にしようと決めました。

当時は、コワーキング・教育・宿泊を横串で刺すコンセプトがしばらく見つからなかったですが、たくさんの人と話し、様々な問いかけをしていただいたことで「くわだて」という言葉が生まれました。

コダテルの写真

―「ヒミツキチ」というコンセプトもワクワクしますが、ヒミツキチは後からひらめいたのですか。

設立する際、行政からの資金支援を受けたので、オープンなスペースを提供したいという思いがありました。一方で、会員を優先するために「ヒミツキチ」という半クローズドな環境にすることも意識しました。これにより、会員が心理的に安全に過ごせるようになり、ゲストとの明確な区別をつけることができました。

コダテルの写真

―コダテルが居場所となり、さまざまなワクワクした「くわだて」を生み出しているのですね。では、皆さんの「くわだて」を引き出すために、意識されていることはありますか。

コダテルでは、みなさんの「やりたい」「やってみたい」という気持ちを引き出すために、例えば、難しい事業や仕事に関することだけでなく、自分のプライベートなこと、例えば旅行に行きたい、3キロ痩せたい、○○さんと飲みに行きたいとか、ライトなやりたいことを挙げてもいいよと伝えています。

「くわだて」を叶えるために、フランクに「やりたいこと」を口に出して、それを貯めていくこと、またそれを多くの人に見てもらいながらアイデアが具現化していく仕組みを作りたいと思っています。

―「やりたいこと」を実現するために、やりたいことを口に出すということはとても重要だと感じました。

コダテルでは、「やりたいこと」を口に出し、さらに「くわだて」として登録をしていただいています。その「くわだて」を私たちで支援し、実現したら賞賛されて次のくわだてをする。小さな成功体験を積み上げてもらうということも大事なのかなと思います。

コダテルの写真

―では、支援というところでは、具体的にどのような支援をして、やりたい思いを実現に導いているのでしょうか。

コダテルでは、利用者の「やりたいこと」に応じて2つのパターンの支援を行っています。

1つ目は、やりたいことが固まっていない人向けに、目標を自由に出してもらい、定期的に「くわだて交換会」などのイベントを開催し、他の会員の反応や意見を聞く機会を提供しています。その中で、登録したくわだてを見直し、進めるべき目標を整理する手助けをしています。

2つ目は、具体的な目標が決まっている人向けに、グループコンサルや個別コンサルを通じて、具体的なアドバイスやサポートを実施しています。グループコンサルでは、具体的な悩みや課題に対して、他の会員やスタッフが答えるなど、コミュニティ内での交流を活用しています。

コダテルの写真

―非常に丁寧な支援を実施されているのですね。

さらに、最近では「商品・サービス開発」講座を受ける人に対して、コーチングを追加し、サポートしています。個別コンサル、コーチング、グループコンサルを組み合わせて、実現に向けた支援を行っています。

コダテルの写真

―これまでの「くわだて」の中で印象に残っている「くわだて」は何ですか。

3年間通ってくださっている60代の女性、大塚さんの古民家カフェを開業したいという「くわだて」です。大塚さんは目標が明確で、前向きに相談を重ね、2年前にカフェを開業し、今も毎月個別コンサルを受けています。コンサルでは、売上や気になる点のチェックを行い、方向性を都度確認しながら支援しています。

大塚さんのカフェの理念は「居心地が良く、癒やされる空間」を作ることで、その方向性を理解しないと大塚さんに合った提案はできません。売上が落ちたときに、回転率を上げるか客単価を上げるかの選択肢がありますが、店舗の理念に基づいて後者の客単価を上げる戦略を選びます。大塚さんは、早く食べて帰りたい客層を狙わないことを決め、値上げにも成功しています。

コダテルの写真

―ここまで幅広く事業を行い、事業を続けていくために意識されていることはありますか。

コダテルでは、ビジネスを持続可能にするために、ロイヤルカスタマー、つまり自分の事業に対して一番お金を払ってくれている顧客にリソースを集中し、彼らからしっかりと対価を得ることを意識しています。ロイヤルカスタマーになっていない見込み客には、支援の量や質を変え、同列で支援することは避け、ロイヤルカスタマーに成果を出してもらうための施策を強化しています。

田舎での事業展開においては、コワーキング、子どもたちの教育、宿泊、講座などを組み合わせて提供すること、事業の掛け算が重要です。

コダテルの写真

―どうやって地域でやっていくのかという問いでは、やはりいろいろなことに取り組むことが大事ということですね。

地方では、新たな切り口を見つけることが事業の継続に繋がります。外部の視点から得たヒントが新しいアイデアを生むこともあり、提案されたことを試してみる姿勢が重要です。失敗もありますが、試行錯誤を重ねることで、新たな可能性を探求しています。

―7年やってきて、ここが一番苦労したということはありますか。

認知度の向上と何を提供しているのかが伝えづらいということです。多様な事業を展開することで、逆にその内容が分かりづらくなり、利用者が「コンサルを受けられる」「ゆっくりできる」「宿泊できる」といった具体的なサービスを理解できないことが今もなお課題となっています。

コダテルの写真

―最後に今後の展望を教えて下さい。

コダテルでは、やりたいことがあるもののまだ決めていない層と、本当にやりたいことを応援してほしい層を明確に分け、それぞれに適切なサポートを提供し、結果を出していくことを目指したいと思っています。

また、子ども向けには新たに先生を増やし、同じ教育観を持つ仲間として一緒に子どもたちの成長を支援したいと考えています。プログラミング教室だけではなく 、子どもたちの第3の居場所としての価値を高めるプログラムを開発していきたいです。

さらに、すごく応援してくれる人たちとライトな層との差を付けていきたいです。ライトな層は、すごく気軽に利用できたりとか、「LINEで登録するとここ使えるよ」みたいにしていってもいいのかなと思ったりしていますね。入口はライトにしていて、決めたらガツガツやるみたいな形を取り、スタッフのリソースを割くところを明確にしたいです。

そのような支援を行う中で、地域の人々が自分の好きなことや強みを活かして新しい商品やサービスを創出し、起業や店舗開業など内部からの盛り上がりをどんどん作っていきたいです。

コダテルをきっかけに、「八幡浜に来たらチャレンジしやすい」、そういう街にし、市内外の人々に「八幡浜って面白い、起業しよう」と思ってもらえたら嬉しいです。

コダテルの写真 コダテルの写真 画像提供:コダテル
掲載日:2025年4月21日 取材者:S・Y